スペーシア海外レポート

中国・北京を旅して
急激に進む都市開発の中での出来事

村井 亮治

広大な国 中国

広場
昨年の春、日本をはじめアジア各国は新型肺炎(SARS)の脅威に怯え、市民生活や観光業界に大きな衝撃を与えた。7月に入りようやく制圧宣言がだされてから2ヶ月後の9月に、中国を訪れる機会があり、安全と言われながらも、不安を抱え、初めての北京旅行へと出発した。 中国といえば、人口10億人超の大国、4千年の歴史、万里の長城などなど、スケールの大きさばかりが浮かぶ。実際、訪れた先の天安門広場、万里の長城、紫禁城、頤和園など、その場に立つと圧倒されてしまうほどの大きさ、機械ではなく道具だけで築き上げられた建築物、さらにそれを造った中国人の偉大さに驚かされる。まさに「大国」というにふさわしい建築物であり、都市だった。

都市開発が進む 中国

そんな感動ばかりの北京市内で多く目につくのが、建設工事現場だ。昔ながらの石造りの家屋の解体現場や建設中の建物や建設クレーンを何基も見ることができる。さらに、歩道では電線類の地中化とも思われる工事も行われている。歩道上に土砂や舗装用の煉瓦が山積みされ、掘削後の大きな穴の周囲には安全策もなく、歩行者の安全確保には関心がないようだ。工事は、夜になっても街灯の明かりの下で続けられ、日本ではあまり想像がつかない光景だった。
 ツアーに同行していた現地ガイドから、北京は2008年のオリンピック開催に向け、また経済成長を促進するため老朽家屋を取壊して商業ビルや事務所ビルなどへの再開発を進めているとの話があった。道路整備も進行中で、天安門を中心とする環状線は4路線あり、さらにその外へも環状線が造られようとしている。北京の街はこれまでにはないくらい急速に都市開発が進んでいるようだ。

急激な開発の一方で・・・

開発
そんな感動と驚きの北京探訪を終え帰国してしばらくしてある新聞記事が目に留まった。「再開発進む北京、立ち退き迫られ」、「行き場ない抗議の焼身」の見出し。その記事によると、今、中国は再開発ブームで、住民に補償金を支払い郊外への移転を進めているが、十分な補償金がもらえず路頭に迷った住民が天安門広場で焼身自殺を図ったというものだ。数日前に訪れその広さに感動したあの天安門広場で。
 急激な開発が進む中で起こったこの悲劇は、再開発に携る者としては少なからずショックを受けた。国のあり方や開発への考え方、手法が全く異なる異国での出来事で自分自身の仕事と重ねる事は到底できないが、「再開発事業は権利者のその後の人生設計に大きな影響与える」このことの重要性と開発の難しさを改めて認識した出来事だった。

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