特集 まちを使いこなす

商店街を舞台にした魅力あるまちづくり
〜中区・大須商店街の話題から〜

村井 亮治

大須商店街

名古屋の中心地、中区栄地区の南には名古屋一、いや東海地方一賑わいと活気のある「大須商店街」がある。大須商店街は、北は若宮大通りに、その他の周囲も主要な幹線道路に囲まれ、いくつかの商店街が集まり構成されている。そしてこの商店街のメイン通りともいえる「万松寺通商店街」では昨年、アーケードの化粧直しと柱の補強などの改修工事が行われた。また、万松寺通商店街と交差する、これもまた賑やかな新天地通商店街も数年前にアーケードの建替え工事が行われており、明るく、快適な商業空間へと生まれ変わった。
 大須は、従来は社寺仏閣を訪れる年配の方々向けのお店が多数あったが、近年ではパソコン、情報通信機器、ファッション、雑貨や洒落たカフェなど、若者向けのお店が出店し新しい魅力をだしている。
 全国的に商店街が衰退した話題が多い中で、大須は空き店舗も全くなく(?)その活気が維持され続けている。しかし、地元商店主の人々はそれに甘んじることなく、多くの知恵を出し合い、商店街の魅力づくりに取組んできている。

商店街がステージ

 大須では商店街を舞台に数多のイベントが開催されるが、その最たるものは商店街が主催し既に20回以上の開催されてきた「大須大道町人祭り」だろう。名古屋まつりとともに広く市民に親しまれている。広い商店街の路上やお店の脇、交差路、公園、社寺の境内などのスペースで舞台に笑いや驚きのある大道芸が演じられ、いたる所で人垣ができている。
 また、アーケードやお店のファサード、ショーウィンドウを一般デザイナーのアート作品の展示スペースとして提供するような取組みもみられ、広い商店街を舞台にしたユニークな試みで人々の注目を集め、高い集客効果をあげてきている。
 大須は、商店街としての商業集積は高く魅力的な空間である。さらに、様々なイベント空間として活用されることで、見る、買う、食べる、参加する。そんな楽しみ方ができる空間へと発展してきた。これからも様々な取組みによりその魅力を高めていってもらいたい。

新しい大須へ

 そして、今大須ではまちの新たな魅力となる2つの再開発ビルの建設工事が進められている。ともに今年のオープンが予定され、完成すれば大須への注目はさらに高まるだろう。再開発は、これまでその地で生まれ育ってきた権利者の資産を活用し進められるものである。しかし、単なる建物"ハコ"を造りお店を新しくするだけではなく、そのお店、建物を使いこなす人々の意識も変えていくことも重要な要素でもある。今までは個々の建物の中で個人の生活パターンによりお店が営まれてきた。しかし、再開発ビルともなれば1つの大きな集合体であり、個人の都合だけでは思うようにいかない部分もでてくる。権利者に求められるものは、ビルとして必要なルールの中で、その建物をどう活用し、自分達のお店とビル全体をいかに繁栄させていくのかを意識し、考えていく事だろう。また、再開発ビルが商店街へ与える影響も大きく、これまでにはない課題も出てきているようだ。しかし、そうした課題を解決していく事で、新しい大須の姿がみえてくると思う。勿論、そのためには我々のような専門家が担う部分もあるだろう。地域密着のまちづくりをめざすコンサルタントとしてまた、大須を愛する市民の1人としてこれからも関わっていきたい。

商店街にこんなもの?!

 愛知県春日井市、JR中央本線勝川駅北口には、和菓子屋やそば屋、八百屋など、様々なお店が軒を連ねる「勝川駅前通商店街」がある。そして、商店街を少し歩いて細い路地を入るとそこには大きな「大仏様」が!これは、昭和3年に建立された「勝川大弘法」で高さは18メートルあり、これほど大きな修行の姿をしたご尊像は珍しいとのこと。弘法様の周囲はお線香の香りが漂いちょっとした憩いの空間となっている。また、弘法様は商店街の幟や御菓子のパッケージにも登場し、まちの活性化にも活かされている。商店街の親しみやすい雰囲気の背景には、そんな弘法様の存在があったからこそかもしれない。

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