歩いて暮らせる街づくりとは
「歩いて暮らせる街づくり」は小渕内閣の経済新生対策(1999年11月)において位置づけられたものであり、30地区のモデルプロジェクトが指定され、桑名市もその1つに選ばれた。
桑名市は、名古屋市への通勤圏として大規模なニュータウン建設が行われ、人口増加の著しい都市であるが、一方で、城下町、宿場町の歴史を有し、昔ながらのコミュニティがあるとともに、中心市街地には市役所などの公共施設がコンパクトに集積し、歩いて暮らせる街としての条件を備えた街でもある。中心市街地の商店街の衰退が問題となる中で、中心部にある寺町商店街は元気のある商店街としても知られるところである。
中心市街地においては、歴史的な環境を活かした歴道事業や駅西の区画整理事業など各種の事業が行われてきたが、必ずしも中心部の将来像への共通認識のもとにそれぞれの事業がすすめられてきたとはいえない状況にあった。また、ハードとしての整備はすすみつつも、それを使いこなすという点では不十分であった。
歩いて暮らせる街づくりはこれまでバラバラに行われてきた各種事業を統一したコンセプトのもとで進めるとともに、まちをうまく使いこなしていこうというものであり、市民が主体になって進めていくことを意図している。
桑名市における取り組み
昨年度は、歩いて暮らせる街づくり構想を策定するとともに、歩行支援ネットワークを考えるワークショップや、まち歩きガイドマップづくりワークショップなどを開催し、市民とともに歩いて暮らせる街づくりを考える第1歩を踏み出した。その成果の1つとして「水のめぐみ」マップを製作した。
今年度は昨年度の取り組みを市民に報告するとともに、まち歩きによって桑名の魅力を発見しようという「まちなかウォーキング&シンポジウム」が7月に開催された。この場で「桑名ワンデイウォーク」の企画が紹介され、実行委員会への参加が呼びかけられた。実行委員会では企画内容を煮詰めるとともに、コースについても実際に歩いて検証し、当日の運営においても大きな役割を果たした。
桑名ワンデイウォークの特徴
このウォーキングが通常のウォーキング大会と異なる点として3点をあげたい。
第1に、市民参加の実行委員会による議論によって、企画内容が豊かに広がったことである。「地元との交流を中心とするまちづくり系ウォーキング」「様々な活動をしている人をウォーキングを通じてつなぐ」「様々な要素を組み合わせることで多様な人々が参加できるようなものにする」というコンセプトは実行委員会の議論の中で生み出された。
第2に、様々な市民団体との連携が図られ、ウォーキングを通じて交流が図られたことである。例えば、デザイン公園では、そこを拠点に活動する市民ガーデンティスの方々がケナフを育てよう会のケナフ製のコップに後藤酒造の水を入れて参加者にふるまった。
第3に、ウォーキングをまちづくりに結びつけたことである。今回の大きなねらいは、新旧住宅地を結びつけ、ニュータウンの人を旧市街地に、旧市街地の人をニュータウンに目を向けさせることにあった。コースの中で「こんなところが桑名にあったの」と好評だったのが東西を結ぶ位置にある里山の竹林の道。まちの魅力が両者を結ぶきっかけになることを示したともいえる。同時にそこにあるゴミの放置に対する問題意識も高まった。また、身障者の方と一緒に歩くことで、気持ちのよい遊歩道にも段差というバリアーがあることもわかった。
ウォーキングとまちづくりの連携の可能性を示した点でも興味深い取り組みであるといえる。来年の開催も楽しみだ。
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