海外視察報告

欧州における都市基盤整備関連開発プロジェクト

浅野 健

 昨年11月中旬に名古屋都市センター主催の海外視察セミナーに参加した。オランダ、スペインの2カ国を訪問し、空港、防災(水害)、都市再生など、名古屋圏が抱える様々な課題の先進事例を視察した。歴史を感じる都市、近代的な都市のどちらも有名建築家を積極的に用いつつ、それぞれの方法で都市の魅力を高めていること、都市を出ると風景が一変し、農村が開発されずに残っていることの2つが特に印象的だった。


アムステルダムのまちなみ

 アムステルダムは、1602年に設立された東インド会社の本拠地として17世紀に隆盛を極めたまちである。4、5階程度を中心としたレンガ造りの建物が並び、運河に映し出される景色は昼も夜も美しい。片側2車線程度の道路に歩道、自転車専用レーン、道路、市電の鉄道敷(バス、自家用車も通行可)があるのは、日本では考えられない光景だった。

アムステルダム市内の運河沿いの風景。歩道と車道の間に自転車専用のレーンが設けられている場合が多い。


SADC(スキポール地域開発会社)

 スキポール空港は、オランダの人口1,600万人を上回る年間3,900万人(2001年)が利用する。ヨーロッパの中央に位置し、アムステルダム中心部へのアクセスもよいことから国際的な企業からのニーズがあり、1987年に官民が50%ずつの出資によりSADCが設立された。SADCは土地整備、都市インフラ整備を行うほか、物流、IT、自動車・航空、電子、ヘルスケアなどの国際的な企業を対象にマーケティングも行う。企業からはコストや使いやすさ、地域の自治体や住民からは都市計画・景観・環境等と、相反するともいえる要求にこたえながら開発を進めている。

スキポール空港周辺に立地する企業。現在では千を超える企業が立地している。


ロッテルダムのまちなみ

 ロッテルダムはオランダ第2の都市で、戦災により中心部のほとんどが消失したため、近代的な建物が並ぶとともに、道路は広幅員で自転車専用レーンと市電専用の鉄道敷が確保されている。戦後、職住分離政策が進められたが夜間人口が減少したため、現在は都心居住に政策が転換されている。有名な建築家を招聘し、市民の関心を引く建物が各地に建設されている。

ロッテルダム市内の近代建築の代表
ともいえるキューブハウス。



コップ・ファン・ザイド地区

 コップ・ファン・ザイド地区は、ロッテルダム中心部の南、ヨーロッパ随一のロッテルダム港の上流部に位置する。ここで市および市港湾局により、1990年代初頭からウォーターフロント開発が行われている。開発に際しては、国内外の有識者からなる審議委員会により都市整備と美観を検討するとともに、有名建築家を多用している。また、機能別のゾーニングを設定せず、需要の変化等に応じた計画変更に対応できるようにしている。港や水辺の雰囲気を活かし、使える建物は活用し、それ以外は新しくつくり変えることで、地区のイメージを一新しようとしている。

1996年に完成し、地区のシンボルであるエラスムス橋。


MB30によるビルバオの都市再生

 ビルバオはスペイン北部バスク地方の中心地で、鉄鉱、造船などで発展したが、これらの衰退、失業などが問題になっていた。そこで1989年に官30%民間70%の出資によりMB30が設立され、ビルバオ都市圏の再生構想がつくられた。この構想のメインがアメリカの建築家フランク・ゲーリー設計のグッゲンハイム美術館及び周辺のリバーフロント計画である。その他にもイギリスの建築家ノーマン・フォスターが地下鉄駅を設計するなど、国際的な専門家を積極的に招聘している。EU統合によるヨーロッパの都市間競争と連携の動きの中で、文化によるイメージアップを図ろうとしている。


ビルバオの都市開発の象徴であるグッゲンハイム美術館。1997年秋オープン。


オランダにおける危機管理体制

 オランダは国土の1/4が海面下で、全国に57ある管理組織(ウォーターボード)によって水と戦ってきた歴史がある。近年では水害をはじめ、道路・鉄道などの大事故、テロなども含めた危機管理に際し迅速に対応できるよう、中央政府に専門機関を設けている。特に水害については、国、州、市町村とあらゆるレベルで危機管理の責任者を明確にし、連絡体系を確立している。また、どのレベルでも防災計画をつくるとともに、防災計画に基づいた訓練と計画の修正を繰り返し行っている。"備えあれば憂いなし"とはこのことを言うのだろう。

バルセロナ
〜ガウディの建築をたずねて〜

 アントニオ・ガウディは1852年に生まれ、1878年のパリ万国に出品したショーケースのデザインがエウセビ・グエルの目にとまり、以降、彼がガウディのスポンサーとなって様々な建築がつくられた。
 一番左の写真のカサ・パトリョは生誕150周年のため、内部が公開されていた。


カサ・パトリョ。
ガウディのデザインで
改修された住宅


今なお建設中の
サグラダファミリア教会


グエル公園。
住宅地となる予定だったが、工事が中断。
その跡を公園にした。

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