特集 まちを使いこなす

円頓寺商店街の空店舗活用

藤沢 徹

イベント利用での空店舗活用

 昨年のラバダブでも紹介した名古屋市西区ものづくり文化の道のその後の展開と、昨夏、ものづくり文化の館が開催されたことを中心に円頓寺商店街の空店舗の活用についての報告をする。 
「ものづくり文化の道」とは名古屋城の西側に広がる名古屋友禅や名古屋扇子、そして江戸時代の名残をとどめる4間道や美濃路などの地域資源をネットワークして整備していこうとしている動きである。 
今年度、ものづくり文化の道検討部会は、昨年度実施されたゾーンのまち歩きのモニター事業に引き続き、「より西区のものづくり文化に触れてもらう」を合言葉にさまざまな実験を行ってきた。そのなかでも目玉であったのが実際にものづくりの職人さんの技を間近で見ることができ、さらに、部分的に伝統の技に参加できるというものづくり文化の館の開催であった。
 7月31日〜8月4日の円頓寺七夕祭り会期中の2日間(8月3・4日)で商店街の空店舗を利用してものづくり文化の館は開催された。この企画には、全面的に円頓寺商店街が協力してくれるかたちとなった。 
円頓寺商店街は古くから名古屋城の門前町としても栄え、特に円頓寺周辺では4間道に並ぶ卸問屋や行商の人々で賑わいがあった。しかしながら昨今は全国のいたるところの商店街と同じである空洞化、人材不足という悩みを持っている。 
 商店街の理事長は、これまでと同じ手法では人の流れは作れない、より地域の特徴をだした魅力づくりをしていかなければならないと語気を強めている。そこで、検討部会と商店街とがタイアップして今回のイベントへの運びとなった。 
スタッフは商店街に住む人を中心に、役所の若手やコンサルタントを交えた、すべてが手作りのイベントであった。開催にむけた準備期間は数年使われていなかった空店舗の清掃から、しつらえまですべてをみんなで設計した。円頓寺に興味をもつ若いイラストレータや商店街で洋品店を営む人、会場のお向かいの化粧品屋さんもすべてがひとつの目的にむかっての作業であった。会場は2部構成となっており、屋内では名古屋友禅と名古屋扇子の職人の実演を、外の駐車場では扇子づくりなどの技を体験できるコーナーが設置された。
 当日は、区内の友禅・扇子の職人さんや、皮工芸のお店をはじめとする、ものづくりに携わっている人たちが先生として参加してくれた。会場の設営、人員手配はこれで完成であったが、問題は如何に、「西区とものづくり」、そして「円頓寺とものづくり」の関係をお客に訴えて参加してもらうかにあった。実際に訪れた人は最初のうちは何故、西区とものづくりが関係しているのかがわからないようであった。イラストレータが描いてくれた、ものづくりの歴史絵を中心にマイクを通してアナウンスし、スタッフ一同呼びかけた結果、1日目の後半から人の流れができるようになった。実際に西区在住者でも西区はものづくりが集積している地区だと知っている人の割合が少ないようで、祭りに訪れ、イベントに参加して初めて特色を知ったという人も中にはいた。
 普段は工場の片隅で作業をしている職人さんもこの日ばかりは子供達に囲まれたり、質問されたりで、普段とは少し違う作業場での雰囲気を楽しんでいるようであった。職人さんが言うには、ものづくりは見て触れてみて初めてその奥ゆかしさが分かる、こういった機会を設けることは非常に意義があるとのことである。

 「商店街活性化」という言葉が聞かれるようになり、全国の商店街が活性化にむけた計画やイベントを実践している。その一方でハード面とソフト面が足並みを揃えて、活性化へのベクトルを歩むことは、さまざまな要素から非常に難しいことも現実である。
 今回の西区のように、観光・交流といったテーマ性をもった地域コンテンツをもって、空店舗を有効活用していくことも1つの手法なのかもしれない。今後は、週末だけの常設イベント施設としての可能性も充分あるだろう。次回、ものづくりの文化の館開催には更なる仕掛けと市民の参加を期待したい。

<関連するホームページ>

  http://www.nagoyanet.ne.jp/monotsukuri
  http://www.nagoyanet.ne.jp/monotsukuri/index.htm
  http://www.nagoyanet.ne.jp/relational/nishiku/index.htm
  http://www.spacia.co.jp/Nagoya/arekore/nisiku.htm
  http://www.spacia.co.jp/rubadub/2002/monodukuri.htm

ギャラリー 本町

 円頓寺商店街は江川線をはさんで「円頓寺筋」と「本町筋」に分かれているわけだが、本町筋にはユニークな空店舗の活用事例がある。「ギャラリー本町」と銘打ったそのスペースでは、月間賃貸ならぬ、日替わりでのスペース貸しを6年間実施してきている。もともとは下地生地を販売していた店舗スペースであったが、店主の高齢化が進み営業を停止した後はテナントを募集して貸していた。ところが、数年入れ替わる業者はいわゆるキャッチセールスのようなお店ばかりであり、本町筋全体に悪影響を及ぼしていた。そこで見るに見かねた、時の組合理事長が、店主と話し合い、行政の助けも得て、組合で借り上げることになった。
 以降、組合を通してユニークなテナントが次々と入って本町筋を明るくするコンテンツとして機能している。最近では、占いの館や駄菓子屋さんなど、円頓寺商店街のストーリーに見合った店舗が営業している。ちなみに現在1日だけ借りるための予算は1,500円程度であるとのこと。商店街を愛する人がいるからこそ、打てた策であるが、今後は補助金を当てにせず如何に成熟していくかが鍵であろう。円頓寺商店街を愛する1人として活動に賛同し、参加していきたい。

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