スペーシアレポート
伊藤彩子
愛知県の西のはずれに近いところに、津島市はある。愛知県下でもちょっと地味な印象の自治体だが(住んでいる方すみません)、一年程前からここで、小さな“嵐”が起こっている。その中心にいるのは「天王文化塾」というグループだ。「塾生」は、市民を中心に現在百人強であり、地域を見直すイベントの開催などを手作りで行っている。 中心となっているのは、まちの本屋さんや布団屋さん、鉄工所や印刷会社社長、市役所職員など、主に50歳前後の壮年男性10名弱だ。もちろんみんなボランティアで、仕事の合間に集まっては、次の企画について話し合う。彼らの気持ちに共通しているのはおそらく、津島の行く末に対する危機感だ。室町時代からの歴史を持つが、受け継がれてきた「記憶」は途絶え、旧い町並みは次々と姿を消し、かつて景気のよかった産業はすっかり元気をなくし、まちの中心部は高齢化・空洞化、次第に名古屋のベッドタウン化してゆき、住民の地域への愛着は薄れるばかりの我がまちに、もう一度活気を取り戻したい…! 塾の立ち上げ当初から、三つの「分科会」をつくった。「まなぶ分科会」と「つなぐ分科会」と「たべる分科会」。「まなぶ」では、地域の歴史の学習を、「つなぐ」では、地域のネットワークづくりを、「たべる」では地域の「おいしいもの探し」を行っている。最近の活動では、甚目寺町から津島に至る「津島上街道」を歩く会(左参照)の開催や、市街地の空店舗をギャラリーにした「まち並アートハウス」などがある。 塾の運営にあたっては、問題も多い。最も大きな問題は、活動メンバーが固定化してしまっていること。塾の運営スタッフとして活躍してくれる人材が、当初からほとんど増えていない。若い人材や女性も少ない。また、活動資金の確保も課題だ。これまで拠点として地元の空店舗を借りて使っていたが、賃貸料は会員が個人的に負担していたため、負担が重すぎて借り続けることができなくなってしまった。克服すべきことは多い。 とは言うものの、二年目の今年は、地域の案内人を育てる「つたえる分科会」や、町並みについて考える分科会、子供を対象にした「天王子供塾」などもスタートする予定であり、なんとか好調に進んでいる。一年目のイベントのうち、好評だったものは継続していく予定だ。また、地元の商店街や小・中学校との協力関係も築いていきたいと考えている。 今のところ”自転車操業“と言えなくもない状態であるが、とにかく今後も手探りでやっていこうと皆で話し合っているところである。 |
最近の活動から…津島街道膝栗毛〜信長ゆめ街道〜甚目寺と津島を結ぶ「津島上街道」ウォーキングを開催。秋晴れのもと、270人の参加者が、織田信長も歩いたという歴史ある街道をたどりながら、史跡の見学などをした。このイベントに合わせて天王文化塾では『信長ゆめ街道』という小冊子を発行した。また、イベントの準備は、甚目寺町、美和町、佐織町など沿道の町の人々との協力のもとに行われた。 |
天王文化塾2000年の活動まなぶ分科会● 郷土の歴史を学ぶ月例会(1月〜12月) ● 郷土の詩人ヨネ・ノグチ銅像補修のための募金活動(2〜5月) ● 津島の歴史案内書『津島?!』出版(5月) ● 津島天王祭り図屏風絵を楽しむ会(7月) ● 津島街道膝栗毛〜信長ゆめ街道〜(10月) ● 上街道案内書『信長ゆめ街道』出版(10月) ● 覚王山界隈史跡めぐり&千種郷土史学習会との交流会(11月) つなぐ分科会 ● 市民懇話会(1月) ● よくわかる・夢えがきセミナー(7月) ● 塾生交流会(9月) ● まち並アートハウス(10月) たべる分科会 ● 第1回ごず茶会「雛の名残の宴」(3月) ● 藤まつり「お抹茶と信長茶漬け」(5月) ● くう・みる・あるく会(郡上八幡見学会)(11月) その他 ● 天王文化塾新聞GOZU発行(1〜4号) ● ホームページの開設 |