コラム

マンション管理組合理事長奮闘記!

加藤達志

 あの凄まじい災害をもたらした東海豪雨の翌日、一本の電話で目が覚めた。「三階の○○(仮にAさん)ですけど、床上浸水しました。」私が一階に住んでいるのに何も被害はないのに、なぜ三階が?最初は理解できなかったが、よく話を聞くと、ベランダに水がたまりその水が部屋に入ってしまったそうだ。しかもその水が下の部屋にも…。

 三階建て十三戸と小規模であることと、立地が気に入ったことが理由で購入したのが四年半前。小規模であるがゆえ、管理組合の役員がすぐにまわってくる。一年目は理事、五年目の今は理事長である。これまでトラブルがなかったわけではないが、まさか自分が理事長の時にこのような災害が起こるとは…。

 出勤前にAさん宅におじゃますると、ベランダに面している部屋だけでなく、その隣の部屋も廊下も水浸しである。床を踏むとフローリングの継ぎ目から水が出てくる。原因ははっきりわからないが、寝る前に排水口のごみをきちんと取ったこと、サッシの下の木目の部分は濡れていなかったことから、水がサッシの高さまでたまって浸水したとは考えにくいとAさんは言う。まずは原因を突きとめるよりも部屋を修復することが先決なので、後日また連絡するということでその場は解散した。

 その約一週間後、Aさんから再び連絡があった。「修理の方は二部屋プラス廊下のフローリングを全て張り替えることで何とかなりそうだけど、管理会社の対応がどうも良くない。理事長さんから売主の会社(仮にB社)に連絡してもらえますか。」確かに被害の場所はAさん宅であるが、もともとの原因は共有部分であるベランダである。サッシの高さまで水がたまって入ったのではないとすると、何か建物構造上に問題があるのでは、と思い早速B社に連絡することにした。

 数日後、B社の営業部長と開発部長、管理会社、施工会社の方が現場を見て、考えられる原因について説明してもらったが、その内容はどうも納得しにくいものであった。しかも瑕疵担保期間の二年が既に過ぎているのでB社には責任がないと言い張るのだ。感情的にはなってはいけないと思いつつも、どうしても…。これでは前に進まない。その後、役員三人による理事会を二回開き、今回の災害のことを居住者全員に周知してもらうとともに、今後の対応をみんなで考えようと、臨時総会を開催することにした。臨時総会ではB社の方にも出席してもらい、白熱する議論となったが、現場検証の時よりも我々の熱意が伝わってきたのか、少しずつ誠意が感じられるようになった。まだどちらがどのような形で今回の被害の費用負担をするか、Aさん宅以外もベランダの防水が必要なのか解決していないが、マンション管理の重要性と、それには多大なエネルギーを要することだけは肌で感じることができた。そして今回の災害を通じて、マンション居住者とのコミュニケーションがより深まったことが、今後の貴重な財産となることだけは間違いない。

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