スペーシアレポート
村井亮治
近年、多くの商店街が衰退傾向にある中、様々なイベントやパソコン、ファッション関係の店舗の進出等により、若者から高齢者まで多世代が行き交う名古屋を代表する「庶民の街」として賑わっている商店街「大須」でまた、新たなまちづくりの展開が始まろうとしている。スペーシアが初期の段階から地域商業者と深く関わってきた「大須30番地区市街地再開発事業(以下、「事業」という)」が昨年12月に名古屋市では初の組合・個人施行(予定)として都市計画決定されたことである。ここでは、事業の経過と内容について簡単に紹介する。 事業予定地区は、名古屋市中区大須三丁目地内で、栄と金山を結ぶ大津通と大須商店街でも特に人通りが多い万松寺通商店街、新天地通商店街に囲まれた敷地面積約5千uのエリアで、衣料や雑貨等の物販店、飲食店、駐車場等の利用となっている。当地区もバブル時代、業務ビル建設のため大手企業による土地買収が進んだ。これに危機感を感じた商業者は、現在の事業予定地より、広い30番地区全体を対象に地元商権利者主導による再開発を実施すべく平成3年に「大須30番地区市街地再開発準備組合」を設立。大型商業施設・駐車場を主用途とし、スケールメリットを活かしたまさに「大須の核」となる再開発実施を熱望する地元と、単独の業務ビル建設を希望する大手企業との溝は大きなものであった。調整が長く続く中で、バブルは崩壊し、大手企業が土地を処分するという方針転換を表明、地区内権利者の万松寺が「大須再開発のため」との英断(大須の発展は、寺と商業者との協力関係に支えられているといっても過言ではない)により土地を取得し、再開発の地元気運は一気に好転した。 しかし、経済情勢は大きく変化し、金融をはじめとする大規模再開発の成立条件確保が難しい時代へと変わっていた。そこで、 番地全体を五地区に分け、段階的・連鎖的に事業を推進するという方針転換のもと、平成9年12月、万松寺通商店街に面する権利者を中心に「大須3番第1地区市街地再開発準備組合」を新たに設立。万松寺が土地を取得した第2地区では、個人施行予定の市街地再開発事業が計画され、一体的開発をめざすことになった。第1地区では、大須の持つ歴史的・魅力的な賑わい空間と都心居住が複合・調和し、大須の顔となる拠点づくりをめざし、ソフト・ハードの両面から検討が続けられている。「大須ドリーム」にかける若手経営者のための登竜門となる物販施設や魅力的な飲食のテーマパークとなる「中華街」など色々なアイデアも多く出されている。準備組合では、第2地区と連携を図りつつ、本組合を年内に設立し、平成14年末の竣工をめざしている。自らの商業・生活基盤強化のための自助努力と、新しいものを常に街に埋め込むことで大須は今の繁栄を築き上げてきた。地元商業者は、商売は生き物、厳しい消費社会を生き残るため、積み重ねの歴史が大須の強みであり、新世紀にふさわしい本格的なまちづくりが不可欠であると主張する。 いま、古き良きものと新しいものが渾然一体となり、生業者主体の「あきんどのまち」をめざし、市街地再開発事業が大須の活性化の「起爆剤」として具体化に向けて動き始めている。 |
事業予定地区 |
大津通からみた万松寺商店街の入口と権利者店舗 |