まちづくりにおけるインターネットの活用
/石田富男はじめに
3年ほど前に「市民参加の新しい方向−パソコン通信の活用」と題してパソコン通信がまちづくりにおける市民参加の手段として重要だと書いたことがある。その時はインターネットがこれほど急速に普及し、数々の情報を提供してくれる場になるとは思ってもいなかったが、そこで書いたことが現実に広がってきている。貴重な情報が詰まっており、これを有効に活用することがまちづくりにとって重要だ。インターネットの世界は広くてその一部しかまだ知らないと思われるが、その一端を紹介してみたい。
1.情報入手の手段として
インターネットの利用によって情報入手が容易になった。有効に活用することがまちづくりを考える上でも重要だ
。●検索エンジン
インターネットにおける情報入手の方法として、最もポピュラーなものが検索エンジンの活用だ。ロボット型の代表である「goo」で「まちづくり」を検索してみると、32,665件がヒット(98.11.10)した。情報の内容は、個人ホームページのものが多く、信頼性が低いという問題点もあるが、当事者のホームページに到達することができれば、かなり正確な情報が入手できるのではないだろうか。ホームページを開設する企業も増加しており、活用の幅は広がるものと考えられる。
●リンク集
特定の分野のホームページを検索する上で、リンク集は便利である。まちづくりに関するリンク集も多いが、最も充実しているのが、学芸出版社が作成している「
建築・土木・環境・まちづくりインターネットアドレスブック」である。まちづくりキーワード別URL集もあり、まちづくりの情報入手に大いに活用したいリンク集である。自治体検索では国土地理院の作成している「ふるさとのホームページ」が最も多くの自治体を網羅しているものと思われる。ただし、公式ホームページのないところでは、個人が作成したものにもリンクしている。なお、公式ページのみをリンクしているものとして、(財)地方自治情報センターや自治省などが協力して提供している「全国自治体マップ検索」がある。ここは簡単な内容紹介があるが、一部、公式ホームページでも抜けているものがある。
愛知県内のすまい・まちづくりに関しては「
あいち☆すまい・まちづくり情報広場」が新しく設置された。今後の利用が期待できる。●データベース
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">パソコン通信の大手NIFTYがインターネットでのデータベースの提供(有料)「マルチメディアDBサービス」をはじめており、新聞検索、企業情報、人物情報などのデータベースが活用できるようになった。しかし、現段階ではサービス内容が限定されており、パソコン通信の方が活用の幅は大きい。インターネットでは無料で活用できるデータベースもある。まちづくりに関連して利用できそうなものとしては以下のようなものがある。
●統計資料
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">まちづくりに関する基礎調査として統計資料の分析は重要である。かつては統計書の数値を電卓で計算しながら加工したものだが、今ではインターネットでデータが簡単に入手できるようになり、利用の幅が広がった。統計書からデータを入力する手間がはぶけたことは大きいし、最新のデータがすぐに利用できるようになった。まだまだ、一部のデータにとどまっていたり、提供の仕方が不統一だったりして、利用しづらい面もあるが、最近、急速に提供されるデータの質が向上しており、今後に期待ができる。こんな便利なものがあるのを知らずに、統計書のデータの入力しているのは本当に無駄だ。このページはもっとPRされるべきだろう。総務庁統計局・統計センター:日本の統計の総元締めであり、国勢調査、住民基本台帳人口移動報告、事業所・企業統計調査など各種の統計のデータが掲載されており、活用の幅は大きい。
あいちの統計(愛知県のホームページ): 愛知県のホームページでは、統計課のみならず、土地利用調整課が「土地に関する統計年報」、住宅企画課が「愛知県の住宅・宅地事情−住宅・宅地関連資料一覧−」を提供しており、このデータも活用できる。
2.情報発信の手段として
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">情報発信手段としても有効である。機関誌等による情報発信では費用がかかり、その相手も限られていたが、インターネットによって安価で多くの人々に簡単に情報発信できるようになった。●自治体
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">愛知県内では22市15町村が公式ホームページを開設し、情報を発信しているが、その内容は観光情報やお知らせ(行政サービス、イベント、防災情報)といったものが多い。まちづくり情報を提供しているところは少なく、総合計画ですらあまり掲載されていない。総合計画策定の取り組みを積極的に紹介しているものとしては、名古屋市の「名古屋新世紀計画2010」や「高浜市」がある。また、「一宮市」では、インターネットによるまちづくりアンケートを実施している。回答者が少なく男性が多いという偏りはあるが、新しい試みとして興味深い。●大学研究室
大学の研究室のホームページでもまちづくりに関する様々な情報を提供しているものが増えてきた。
最もコンピュータネットワークを活用していると思われるのが「
東京理科大学渡辺研究室」である。大学院の講座の内容をNIFTYの都市計画フォーラムで公表し、意見を求めている。まちづくり条例や都市計画マスタープランをテーマにし内容の濃い講義が行われている。山梨の住宅に関する豊富な情報提供が行われているのが「
山梨大学教育学部田中研究室」である。田中先生は豊田高専におられ、この地域との関わりも深い。●NPO
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">NPO活動が活発になっており、その情報発信も積極的に行われるようになってきている。この地域のまちづくりにかかわるものとしては以下のようなものがある。●個人
個人でもいろいろな情報を発信している例が増えている。個人のホームページは趣味的なものが多く、玉石混淆であるが、まちづくりに直接関わる人が情報発信していたり、1つのテーマを重点的にレポートしているものも見られる。
個人からの情報発信が大きな市民運動につながっていくことも、インターネットでは可能だ。新しいまちづくりへの展開を期待したい。
3.意見交換の手段として
インターネットを意見交換の手段として活用することも広まっている。
●アイデア募集
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">ホームページを通じて市政に関する意見をメールで送れるように設定しているところは多いが、さらにアイデア募集などをメールでも受けつけるような例も増えている。名古屋市でも「わたしがつくる名古屋は、こんなまち」の作文募集をやっていた。これは、募集という一方向だけのものであるが、高浜市の「新世紀NETフォーラム」の試みは、新しい総合計画策定にあたって意見を募集し、それを掲載することで、意見交換も行われるようになっている。 FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">愛知県国際博推進局では環境共生と国際博覧会の役割をテーマに「環境共生フォーラム」を期間限定で開催している。専門家による具体的な提言や議論をインターネット上で実施しており、一般からも質問や意見を書き込むことができる。●都市マスにおける市民参加の試み
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">インターネットを通じた市民参加による計画策定の試みも見られる。都市計画マスタープランの策定における大和市での取り組みは、都市計画学会の機関誌に一般研究論文として紹介もされているが、これまでなかなか参加できてなかった若・中年男性の取り込むに成果があったことが報告されている。●メーリングリスト
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">メーリングリストとは、リストに掲載された人々に1度にメールが送信できるシステムであり、グループ内での情報伝達の手段として利用されるようになってきた。私個人の話としても大学時代の仲間との懐かしいやりとりに利用している。まちづくりに関しては都市政策を考える会のメーリングリストに参加しているが、ここでは現在問題となっている定期借家権についての議論が行われている。●フォーラム(会議室)
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">パソコン通信では数々のフォーラム(会議室)が設置され、様々な意見交換が行われている。NIFTYの都市計画フォーラムでは、まちづくりに関する各種の議論が行われており、ここでの議論が実際のまちづくりにつながるという例もみられる。情報交換のみならず、ネットワークを広げるという意味でも重要な意味を持っている。おわりに
FONT FACE="MS 明朝" LANG="JA">愛知県の県政モニターアンケート調査によると、現在インターネットを利用している人は12.8%にとどまっているが、将来使いたいという人は58.5%に達している。インターネットが将来、重要な通信手段となることは間違いなく、有効に使いこなすことが、これからのまちづくりにとって重要だろう。なお、ここに掲載した内容は、SPACIAのホームページでも公開しており、紹介したページにリンクできるようにしている。ここでは紹介しきれなかったもの、新しい試みについても今後、どんどん更新していきたいと考えている。興味をもたれた方は下記までアクセスしてほしい。