名古屋まちづくり情報

Information

名古屋栄にオープンしたシン中日ビル探訪

 

旧中日ビルが19664月にオープンしてから58年、シン中日ビルが2024423日にグランドオープンした。

【新旧比較】

 旧中日ビルは12階建でその屋上に回転展望レストランがあった。そこからは御岳山や伊吹山、養老山脈などが見えた。オフィス階は天井が低くて、IT化が進むと二重床にして配線する必要があるので、ますます天井が低くなるという問題を抱えていた。

シン中日ビルは最高高さ158m(旧53m・3.0倍)、階数:地下4階、地上33階等(旧地下4階、地上12階等)、建築面積5,927㎡(旧5,772㎡・1.0倍)、延床面積117,000㎡(旧84,492㎡・1.4倍)であり、容積率は基準が948%に対し、都市再生特別地区による容積率割増を受けて、1,470%に増加している。(写真①~②)

【活気をもたらす画期は何か】

 従来の百貨店を代表とする大型商業施設は出入口を限定して、内部に顧客を囲い込み、屋内を非日常的な空間をつくってきた。よって、1階の外側壁面はショーウインドとして使われることが多い。しかし、最近の新しい商業ビル、例えばラシックでは久屋大通沿の店舗には一つの出入口が設えてある。そして、シン中日ビル。このビルは広小路通から4m、久屋大通から2mをセットバックして建設された。1階部分の店舗は原則1店舗区画につき1つの庇付き出入口があるので、歩道から段差なく、直接に店舗へアクセスすることができる(現在は混乱防止のため、それらの出入口は閉鎖中)。特に広小路通側の店舗(ブルーボトルコーヒー)には、4mのセットバック空間(排水溝があるので実質は3.5mか)と3つの出入口があり、そこから飲食サービスを提供することが可能である。いわゆる本格的オープンカフェが展開できそうである。(写真③)

【継承とオマージュ】

7階までの低層階の外装意匠は旧中日ビルの外装エッセンスを踏襲している。

また、7階の屋上広場にはウッドデッキの広場に円形の人工芝生が敷かれている。そこは旧中日ビルの展望レストランをイメージしたもので、かつシン中日ビルのシンボルマークのポイントとなっている。ここで、「世界の中心で愛を叫ぶ」イベントすれば面白いかもしれない。(写真④)

 旧中日ビルには広小路通に面して1階にユーハイム、2階にヒマラヤの二つの喫茶店があった。シンでは1階はブルーボトルコーヒーが取って代わり、同じ喫茶系になった。2階はmont-bell(モンベル)というアウトドア用品店が入居した。全く旧とは関係のない店舗なのだが、外から店舗を見ると登山用具を販売しているだけに、マッターホルンの大きな写真が掲げられていた。ヒマラヤに対してアルプスを示すことでオマージュと言えなくもないが、ここではモンベルさんにエベレスト(ヒマラヤ山脈)の写真に交換してもらおうか。

【シン・ランの館】

 423日はすべての店が新装オープンである。開店祝いと言えば胡蝶蘭が送られることが多い。胡蝶蘭の花言葉は「繁栄」「成功」であり、開店祝いにピッタリである。しかも、比較的長い間、美しい花が開いているので、めでたさも持続するのである。

 そこでB1階から7階までのフロアにいくつの胡蝶蘭の鉢があるかを調査(2024.4.27時点)した。全部で231鉢である。内訳はB154192113764405660735。一つの鉢には一般的に3本の茎(豪華版は5本の茎がある)があり、1本の茎の両サイドに20輪の花が咲いているとすれば、合計約14,000輪の花が咲き乱れていることになる。まさにシン中日ビルは“ランの館”と化しているのである。(写真⑤)

 花屋も大変であろう。423日に910割咲にした鉢を納入するために、温度コントロールをしたに違いない。これだけ一斉に注文が入ると胡蝶蘭価格は高騰することはないのだろうか?

【そしていくつか 中高層階のなまこ壁とエスカレーターのスピード】

 中高層階の外装デザインは白の格子状フレームで立ち上がっているが、遠くから見るとオフィスやホテルの窓が黒く反射するため、方形の“なまこ壁”に見える。それゆえ和風っぽい。1階店舗の営業終了後に閉められるシャッターは、このなまこ壁に似せてある。意図したものなのか、偶然なのか。

 低層階のエスカレーターのスピードがゆっくりしている。それに対し、オフィス棟へのそれは感覚的にスピードが1.5倍にアップしている。これは来訪者層の違いであろう。低層階は老若男女が集まり、業務階はバリバリの現役ワーカーが集まる。その違いが速度の差となって表れている。バリアフリー対応と言えようか。

 

シン中日ビルは新しい発見があり、探索し甲斐のあるビルなのだ。

 

①旧中日ビル地上12階建の上に回転展望レストランがあった。
①旧中日ビル地上12階建の上に回転展望レストランがあった。
②シン中日ビル。地上33階建で、低層階は旧ビルの外装エッセンスを踏襲。中高層階は白の格子状フレームを用いているため、なまこ壁的風情がある。名古屋の碁盤割を踏襲しているという指摘もあった。
②シン中日ビル。地上33階建で、低層階は旧ビルの外装エッセンスを踏襲。中高層階は白の格子状フレームを用いているため、なまこ壁的風情がある。名古屋の碁盤割を踏襲しているという指摘もあった。
③広小路通に面するブルーボトルコーヒー側のセットバック空間。4mのセットバックがなされているが、排水溝があるため、実質3.5mの空間か。ここにオープンカフェを設置すれば、まちの雰囲気も大きく変わりそうだ。3つのうち2つの出入口で飲食のサービスが提供できる。
③広小路通に面するブルーボトルコーヒー側のセットバック空間。4mのセットバックがなされているが、排水溝があるため、実質3.5mの空間か。ここにオープンカフェを設置すれば、まちの雰囲気も大きく変わりそうだ。3つのうち2つの出入口で飲食のサービスが提供できる。
④ウッドデッキ広場の円形人工芝生広場。ここから見る夜景は美しい。芝生の中心で絆を確かめあうグループ?背番号は54+66=120となって、何を意味する?何かが生まれそうな空間だ。
④ウッドデッキ広場の円形人工芝生広場。ここから見る夜景は美しい。芝生の中心で絆を確かめあうグループ?背番号は54+66=120となって、何を意味する?何かが生まれそうな空間だ。
⑤新装開店祝いには花言葉が「繁栄」と「成功」であり、花そのものも長持ちする胡蝶蘭で一杯である。まさに「シン・ランの館」。B1~7階までに231鉢が飾られていた。一つの店舗で最も多かったのがB1の丸明さんの26鉢、3階には丸明のレストランがあり、そこには10鉢あるので、合わせると36鉢。すごい量ですね。
⑤新装開店祝いには花言葉が「繁栄」と「成功」であり、花そのものも長持ちする胡蝶蘭で一杯である。まさに「シン・ランの館」。B1~7階までに231鉢が飾られていた。一つの店舗で最も多かったのがB1の丸明さんの26鉢、3階には丸明のレストランがあり、そこには10鉢あるので、合わせると36鉢。すごい量ですね。
(2024.5.9/井澤知旦)

ページTOPへ