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減価償却型から増価蓄積型によるストックシェアリングへ
2022年1月5日付の日経新聞で中山淳史氏の「Z世代が率いる価値革命」の記事に目がとまった。ちなみにZ世代とは現時点で10~20歳代前半の年代で、生まれた時からデジタル世界にどっぷり漬かり、SNSやオンラインでコミュニケーションが当たり前となっている世代だと言われている。
Z世代は「減価償却型」経済からの脱却をめざしていると中山氏は指摘する。一般的にモノは買った時の価値が最大で、年々価値を落としていく、そんなモノを何年も使い続けていくのは非合理的で、しかも最後は廃棄されるので、地球環境に影響を及ぼすものとして、Z世代は敏感にとらえるからだ。そこで登場するのが「増価蓄積型」経済である。その具体的な考え方が「アップデート」や「アップサイクル」である。前者はソフトの更新によって製品の価値を増価するもので、よく使われる言葉なので理解しやすい。後者は製品をリサイクルする際に、前の製品よりも品質を引き上げて再利用することをいう。この記事で事例にあげられているのは、CASEのように安全支援機能や自動運転支援機能により自動車の価値を高めたり、生活データの蓄積による快適環境の創出やスマート機器の最新化により住宅の価値を高めたりすることである。記事にはないが、スマホは機種を変えなくても(機種の性能の範囲で)OSやアプリはアップデートされ、常に最新の状況に置かれていると想定すると分かりやすい。
また最近では自動車や自転車などのシェアリングが一般化しているが、今あるそれらの価値をできるだけ多くの人々に効率よく利用してもらうことをめざすものである。自己所有による利用頻度とシェアリングによるそれとでは、利用価値の蓄積は後者のほうが圧倒的に多い。そこで注目されるのがストックシェアリングである。蓄積された空間や時間、人間を指し、言い換えれば場所・歴史・人材(ノウハウ)を意味する。
建物は時間とともに劣化していくが、スクラップ&ビルドでなく、躯体を残したままリノベーション(修復)していくことでバージョンアップし、所有者に限定せず、その価値を引き出せる利用者が活用していく。その繰り返しは「場所」に意味を持たせ、それらの建築群は「空間」としての価値を増殖させる。「時間」の蓄積は「歴史」であり、それをシェアリングするのが観光である。時間を蓄積した建築群は「重要伝統的建造物群」となり、保存・活用の対象になり、観光資源となるのである。最後は「人間」=「人材」である。前者は生物学的表現で、後者は経済学的表現の違いはある。「人間」はモノではないので、減価償却という概念に合わない。むしろ、経験を積み、知識を蓄えることで成長・成熟するので、「人間」は増価蓄積型そのものである。「人材」として表現するなら、劣化していくので、それを防止するために研修制度がある。
この様に見てくると、Z世代に限らず、あらゆる世代が「増価蓄積型」の生活様式が求められるのではないか。地域に蓄積されたストックを増価していくように再編集し、シェアリングすることで、それぞれの価値を有効に活用することで生活を豊かにしていくのである。
よって「増価」・「蓄積」・「共有」の3つがキーワードとなるが、最重要な視点は「増価」であろうか。「空間」・「時間」・「人間」の劣化を防ぎ、むしろ「改修」・「蓄積」・「研修」を通じて価値を高めていくことである。そんな地域価値を編集できる力を持った主体=総合的市民力(市民や企業・行政を含めて)が求められる。