住まいまちづくりコラム

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政令指定都市と人口減少

【政令指定都市も人口減少の時代へ】
 政令指定都市は20都市あるが、そのうち100万人以上の人口規模を持つ都市は11都市である。2023年1月1日の人口が前年と比較して減少した都市は5都市(横浜・札幌・神戸・京都・広島)あり、最も人口減少率が高かったのは神戸市の▲0.44%であった。具体的な数値を見ると神戸市のそれは150.8万人、ピークは2011年の154.5万人であるから、12年間で3.7万人も減少しているが、直近の同年12月1日のそれは149.9万人と減少は加速している。ちなみに名古屋市は今のところ辛うじて人口増加(前年比0.06%増)しているが、間もなく減少に転じるであろう。
【子育て支援で人口増加の流山市と明石市】
 このような人口減少への対応はどの自治体も四苦八苦である。そんななかで千葉県流山市や兵庫県明石市のように子育て支援等に力点を置いている都市は、連続して人口増加を記録している。流山市はここ20年間で5.8万人増、明石市はここ10年間で1.4万人増を記録している。両都市は人口20万人都市あるいは30万都市なので、エッジの効いた政策を打ち出すことができ、それが功を奏した事例である。またそれを推進する市長のリーダーシップが発揮されているからであろう。
【人口減少が著しい神戸市】
他方、神戸市では、地場の産業(重工業やアパレル等)の衰退と関西圏全体の衰退の両輪で衰退してきて人口減少が続いている。神戸から大阪に通勤する人々が多いが、神戸市郊外(西神中央駅)から大阪駅まで70分かかるのに対し、神戸市の隣の明石市(明石駅)から大阪駅までは40分と、30分の差がある。大阪への通勤者にとっては地価が安く、子育て施策が充実している明石市が選択されるのは明白であろう。それに対し、神戸市は周辺都市のJR駅にポスターを掲げた。JR明石駅のポスターは「家どこ? って言われて神戸の方とか いうぐらいやったら 神戸に住んだ方がええな。」である。新聞記事では「明石市に喧嘩を売っている」と書かれているが、こんなポスターで実利を伴う居住地選択に影響を与えるとは思えない。むしろヤケクソジョークにしか思えない。
【光る都市へ向けて、どうする名古屋?】
 戦後、市町村合併と土地区画整理事業で人口増加の受け皿となった郊外地は頭打ちとなり、むしろ名駅や栄を含む区での人口増加が目につく(2023年までの長期的推移)。これは交通便のいい都心でのタワーマンションの建設が進んでいるからであろう。自然動態(出生-死亡)は2010年以降マイナスに転じ、社会動態(転入-転出)も0に近づいている。転出の主要因は関東であり、転入の主要因は中部圏であるが、特に若い層(20~39歳)の関東への転出が目立つ。名古屋市もこのまま推移していくと間もなく減少に転じるであろう。
 若い層の市内定着を高めていく必要があるのだが、もともと愛知県は大学への地元残留率も地元就職希望率も他の大都市を含む都道府県の中でも群を抜いて高い。しかし、関東との関係で言えば、引き抜かれている。ビジネスに成功したら、あるいは有名人になれば、名古屋を離れ東京に出ていく。
 オンライン会議やリニア新幹線の開通によって距離的疎遠感が解消されれば、名古屋定着は高まるであろうか。とはいえ、名古屋がビジネス的にも生活的にも刺激的で創造的な都市へ変身していく必要があろう。東京に比べてコンパクトな都市構造を持っているので、それらの実現は可能ではないか。
【生涯ボケずに楽しく住み続けられるマチ】
これからの経済を牽引していくクリエイティブ・クラスに超目したリチャード・フロリダ氏はクリエイティブな都市の条件として、A.建物と自然が融合した環境がある、B.多種多様な人材が集まり、そのコミュニティで相互に影響し合えるとのサインを発している(界隈環境)、C.ストリートライフやカフェ文化、芸術・音楽などアクティブでクリエイティブな試みが行われている、D.完成されていない場所に関わって、作り変えていくことのできる居場所がある、の4つをあげている。癒しと親密、刺激と創造の組み合わせである。これらをひとつずつ着実に実現していくべきである。
 行き詰って、高速鉄道東山線藤が丘駅に「家どこ? って言われて名古屋の方とか いうぐらいなら 名古屋に住んだ方がええがや。」というポスターを貼るのはやめよう。もし貼るなら「スタートアップ、子育てバックアップ、敬老パス・・・ 生涯ボケずに楽しく住み続けたいなら 名古屋しかないんじゃないの。」かな。

(2024.1.10/井澤知旦)

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