住まいまちづくりコラム

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知立神社 養正館

 

 愛知登文会制作「あいちのたてもの」の最新版は「いのりのば編」。宗教施設がテーマだ。その中で宗教施設ではないが、注目したい建物として紹介しているのが知立神社にある養正館である。「未だ文化財ではないが」として紹介しているのは文化財として保存活用できればという思いがこめられている。

 

 この建物のことを初めて知ったのは、愛知登文会で登録有形文化財の見学会を企画した時のこと。打合せで訪問させてもらった時に「この養正館を登録文化財にしたくて申請したが、耐震上の問題から登録有形文化財にできなかった」との話を伺った。その際は外観を見学しただけだったが、ずっと心に残っていた。今回、知立神社の取材と写真撮影に伺った際に登録文化財ではないが、中を拝見させてもらえないかとお願いしたところ、心よく見学させていただくことができた。6年越しで念願がかない、期待を裏切らない魅力ある建物空間を味わうことができた。冊子を執筆いただいた村瀬氏にもこの建物を気にいっていただき、冊子の中でもとりあげていただいた。

 たまたま、同時期に知立市で池鯉鮒宿の歴史的価値を市民で共有し、今後の保存活用にむけた取り組みを検討するためのワークショップをお手伝いしており、知立神社の茶室もその対象となっていた。茶室も魅力的な建物ではあるが、養正館の魅力も知ってもらえればと所有者にお願いし、市民ワークショップでの見学対象とさせていただくことができた。参加者からは「窓からの光の入り方が素敵だった」「天井のべニア張りに隠された梁がとても立派だったので、べニアを剥すとよい」「広いスペースがあるので、何かに活用できるとよい」という声が寄せられた。

 老朽化や耐震上の問題から継続的な活用には改修が必要となり、その費用捻出が課題ではあるが、最近では、クラウドファンディングで歴史的建築物の修理費用を募る事例も増えている。

 知立市では昨年のワークショップでの取り組みの成果をうけて、今年度は養正館のことを知ってもらえるようなイベントを開催したいという。この建物の魅力を知ってもらうことで、支援の輪が広がることを期待している。

 

養正館外観 耐震上の問題から鉄柱で支えられている
養正館外観 耐震上の問題から鉄柱で支えられている
当初は明治用水土功事務所として建てられた
当初は明治用水土功事務所として建てられた
2階 1つの大きな部屋、窓が多くて明るい
2階 1つの大きな部屋、窓が多くて明るい
立派な梁が破れた天井の穴から見える
立派な梁が破れた天井の穴から見える
婉曲した階段、使い勝手はよくないがデザインは魅力的
婉曲した階段、使い勝手はよくないがデザインは魅力的

「あいちのたてもの いのりのば編」の神社の項は以下からダウンロード可能です。

 

http://www.aichi-tobunkai.org/aichi_tatemono/03inorinoba/01jinjya.pdf

 

(2021.4.5/石田富男)

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