図書紹介

Books

認知症世界の歩き方/筧裕介著  樋口直美監修  認知症未来共創ハブほか監修

ライツ社/2021年9月15日発行

 認知症については、家族、親族や知人の間にその当事者がいないと実際にどのくらい介助や介護が大変だとかはイメージしにくいであろうし、一方で文献やマスコミ報道、医療や介護の専門家の話などを聞いても難しいところがある。しかし、実際には65歳以上の認知症有病率は2020年で16.7%、約602万人、実に6人に1人程度が認知症有病者と言われており、認知症は年をとれば誰にでも起こりうることであり、人間誰もが年を重ねるので、それは自分にも身近な家族にも起こりうることだとも言える。
 このような若干の懸念を自分でも思い始めた時に、あるイベント企画でこの著書に巡り合った。この著書は、認知症のある人の頭をのぞくという視点に立ち、当事者へのインタビューを元にして編集されている。また、表紙をはじめ著書全体にイラストが使われている点も親しみやすい。内容は2つのPARTに分かれ、PART1は「認知症世界の歩き方」で、認知症のある人が生きている世界がわかる13のストーリーを並べている。後半のPART2は「旅のガイド」と題して、認知症とともに生きるための知恵を学べる内容となっている。認知症は、記憶のトラブル、時間・空間のトラブル、五感のトラブルなどがあって、それらのトラブルが複雑に絡み合ったり、認知症有病者であってもある時には一時的に記憶が戻るなど、人によって発症の仕方が様々であるため、その様子を「ミステリーバス」「サッカク砂漠」などユニークなネーミングをつけ、わかりやすく明るい気持ちで学ぶことができる。また、その取り組み方も「無理しない、がんばらない」「一人で頑張らない」「しんどい気持ちを閉じ込めない」「誰かに話してみる」など、人とのつながりやコミュニケーションといったごく普通に無理なくできるものが紹介されている。
 認知症を理解し、それと向き合っていけるような気持ちに少しでもさせてくれる著書としておすすめしたい本である。
(2022.2.4/浅野 健)

ページTOPへ