特集  都心ナゴヤに負けない地域の力

まちづくり市民力がまちを元気に
〜くわな流のまちづくり〜

石田 富男

私が桑名のまちに関わって3年。それまでは名古屋圏の中の一都市としてデータ分析する中でなんとなく都市イメージを持っていたに過ぎず、ニュータウン開発からくる「名古屋のベッドタウン」という印象が強かった。しかし、桑名のまちの歴史や人に触れ、その奥の深さに気づかされた。私の中で大きく印象が変わったまちといってよい。

「くわな」まちづくりブックの取り組み

六華苑でのシンポジウムの様子
六華苑をシンポジウムの会場として活用。単なる文化財としてではなく、まちづくりの拠点として利用されている。
「桑名のまちづくりブックが作りたい」という話を市役所の名物課長Iさんから伺ったのは2000年の夏頃。ちょうど桑名市では、桑名開府400年を記念して2001年度に平成のまちづくり「くわなルネッサンス」を開催することになっており、これまでの桑名のまちづくりを総括し、市民とともに新しいまちづくりを進めるきっかけとなるまちづくりブックを作成するということは興味深い取り組みであった。後で聞くとその頃、発行された「まちづくりブック伊勢」に刺激を受け、それに負けないものをつくりたい、という思いがあったという。
 編集委員会が立ちあがったのは2000年の年末。桑名に対する熱い思い入れをもった市民、歴史家、建築家、都市計画家、大学の先生、市役所の職員などが参加。私も事務局として参加した。
 当初、数回の会議で本の構成・目次を決定し、分担して執筆に入るつもりが、編集委員の桑名とまちづくりに対する思い入れが交差し、なかなか本の構成が決まらない。ようやく本の骨格がまとまったのは翌年10月。2001年度中に発行をという当初の目論見は大きく狂ってしまった。実際に原稿を分担してからも、委員会で意見交換する中で何度も文章を変更し、こんなことで本ができるのだろうか…と思ったのは私だけではなかったようだ。
 この本づくりにあたっては、市民に桑名のまちのよさを知ってもらい、まちづくりに関心をもってもらうため、机上の作業だけではなく、桑名の財産目録をつくり、実際にまちに出て確かめたり、様々な分野の人々へのインタビュー調査を行ったりした。2002年の8月には市民から有志を募り、試読会を開催し修正を加えた。このようなプロセスを経ることによって、時間はかかったが、これまでに作成されたまちづくりブックとはまた違った、独自の味のある本ができあがったと思う。桑名の暮らしの豊かさとまちづくりの歴史に着目し、そこからまちをつくりあげるための様々な力=「まちづくり市民力」を導きだし、この力を知り、身につけ、実践することを「まちづくり極意」として示すとともに、実際にまちに接近するための手ほどきを「まちを識(し)る術(すべ)」として紹介しているところが特徴だ。桑名を題材にしながらも、このプロセスや導きだされた「まちづくり市民力」は、どこのまちづくりにも通じるのではないだろうか。

くわな」まちづくりブックの取り組み

住吉入江の様子
住吉入江は、かつては環境衛生上問題が多く、周辺への景観阻害の原因となっていたところが魅力的な空間としてよみがえった。
桑名市では早くから中心市街地の活性化に取り組んでおり、近年になってその成果が見え始めた。その一つが駅西の土地区画整理事業。一旦は地元の反対で立ち消えになったが、平成にはいってからの仕切り直しによって、2001年9月に事業認可を受けた。まちづくり協議会が立ち上がり、将来のまちづくりの方向について、ワークショップ方式による検討がすすめられている。
 もう一つは城下町地区の歴みち事業。スペーシアとして1993年度に寺町商店街の調査のお手伝いをしているが、それをもとに外堀の整備について市への提案が行われた。これを受ける形でワークショップによる歴みち事業の計画づくりが行われ、1998年度に事業採択された。その中心となる事業が桑名城外堀線の整備であり、2001年度には住吉入江、2002年度には寺町堀の整備が完了した。住吉入江北には全国でも指折りの大地主であった諸戸氏の邸宅があり、六華苑と諸戸氏庭園として公開されている。コンドルの設計による建築物などもあって観光の拠点ともなっている。さらに、揖斐川の高潮防波堤の整備に伴って七里の渡しの再生が行われている。400年もの歴史を有する桑名の歴史文化が見なおされ、歴史的環境を活かしたまちづくりがすすめられている。

歩いて暮らせる街づくり

歩いて暮らせる街づくりはこのような一連の様々な取り組みの流れの中に位置づけられる。これもきっかけはIさんだった。これまで中心市街地で様々な取り組みが行われてきたが、必ずしも中心部の将来像への共通認識のもとにそれぞれの事業がすすめられてきたとはいえない状況にあり、それらを統一するコンセプトとして「歩いて暮らせる街づくり」に着目したのだ。国のモデルプロジェクトに応募。初年度20都市からはもれたが、翌年の十都市に選ばれ、市民ワークショップなどを開催しながら、市民とともに歩いて暮らせる街づくりを考える第一歩を踏み出した。
 桑名のまち歩きでよく利用される「水のめぐみ」マップはこの時の成果の一つだ。マップづくりに関心のある市民が集まり、桑名にゆかりのある5つのテーマの中から「みず」と「はまぐり」の2つのテーマに別れ、まち歩きなどによって素材を収集。これらを「水のめぐみ」として一つのマップにまとめた。これまでとは視点を変えてまちをみることで、新しいまちの魅力が発見することができたたといえるだろう。
 2002年度からは市民に歩いて暮らせる街づくりについて考えてもらうきっかけづくりとして、市民参加の実行委員会形式による「桑名ワンデイウォーク」が始まった。第1回は「歩桑名(あるくわな) 西の丘から東の川まで」と銘打ち、ニュータウンにある総合運動公園予定地から城下町までの約8キロ。昨年の第2回では、市民と行政の力によって存続が決まった北勢線を利用し、七和駅から古くからの街道を歩いて城下町に至る10キロ。平成元年より市民の手によって始まった桑名の殿様御台所祭との相乗効果をねらって同日の開催とし、「歩桑名(あるくわな) 乗って歩けば御台所」と銘打った。
 健康への関心が高まる中でウォーキングがブームとなっているが、ワンデイウォークはまちづくり系ウォーキングとして、まちとのつながりや様々な市民団体との連携を意識している。桑名・員弁郡ではまちかど博物館もちょうどこの日にオープンした。桑名のまちの魅力を知ってもらうきっかけとしてこのワンデイウォークが成長していくことを期待したい。

 

まちづくりブック
B判/96ページ/並製   定価1200円+税
ISBN4-88519-205-6
発行者 桑名市   発行所 中日出版社
発行 2003年3月
 スペーシアでは割引価格1,000円(税込)で販売しています。
 あなたのまちでもこんなまちづくりブックを作ってみませんか。

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