スペーシアレポート

まちづくりとゲーミング

山崎 崇

近年、市民参加のまちづくりが各地で行なわれている。地域資源の再発見のためのまち歩きや将来の地域のイメージを創造するためのデザインゲームなど、様々な手法が市民参加のまちづくりを手助けしている。その手法の中で今後注目されるもののひとつがゲーミングシミュレーション(以下、ゲーミングと略す)である。
 ゲーミングは開発段階のツールであり、定義も明確ではない。ここでは「設計者によって構造化された仮想的な世界において、参加するプレイヤー間での合意形成やコミュニケーションによる様々な変化を経験すること」とする。開発段階であるため多くの課題は抱えているが、ここではまちづくりにおけるゲーミングの可能性について述べたいと思う。
 従来の行政主導ではなく、市民が参加してまちづくりを今後どうするべきかと議論を行うことを仮定する。しかし、議論に参加する人が集まるのか、集まった人達の立場も考え方も様々で議論になるのか、限定された人しか議論に参加していないのでは、など様々な問題がある。
 議論に参加する人を集める場合、「まちづくりについて議論したいので集まってください。」との呼びかけでは、まちづくりに興味のない人や利害関係を意識していない人は参加せず、限定的な集まりになってしまう恐れがある。「まちづくりゲームに参加しませんか」と呼びかけた方が、気軽に参加できるため、より多くの様々な考えを持った人が集まることのできる"場"になると思う。子どもが参加できるようなゲーミングであれば、子どもに親を連れてきてもらい親子で一緒に楽しみながら参加できる"場"の提供もできる。
 次に、集まった人達はその"場"でゲーミングをすることになる。仮想的なゲーミングの世界にもルールがある。参加者はルールを守りながら与えられた役割を演じることでゲーミング世界の中で行動する。実はこのゲーミング世界での行動がもたらす効果は非常に大きいのである。議論の前に信頼関係の構築やまちづくりの課題の共有化などを行なわないと、コミュニケーションが上手くいかず、結果として時間だけがかかり合意形成までたどり着かないということがある。しかし、ゲーミングに楽しみながら参加しているうちに、参加者は与えられた役割を演じながら他の参加者と容易にコミュニケーションを図ることができる。さらに、ゲーミング世界での行動を通じて、自分や相手の考えや行動、ゲーミング世界などを普段の自分とは異なる立場で客観的に考えることができる。これらは合意形成に一役買えると思う。
 最初に述べたように、ゲーミングは開発段階のツールであり、コンピューターによってまちを3Dで表現し、ゲーミング世界をよりリアルに構築するなど様々な工夫をしたものが開発されている。ゲーミングはますます楽しく、ますます便利なまちづくりのツールになると思う。

Shop Around
 学生時代に開発した「競争と協調による商店街活性化ゲーム Shop Around」のボードとカード

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