スペーシアレポート

住民参加によるまちづくり体験記
〜瀬戸市本地地区の取り組みより〜

浅井 洋樹

 私は、昨年4月から研修研究員として業務に携わっている。そのかたわら大学院で、住民参加によるまちづくりを研究テーマに論文を執筆しているが、行政やコンサルタントが、まちづくりの現場で、どのように計画づくりを進めているかを知るには、学生の立場では限界があると考えている。幸いスペーシアで、瀬戸市本地地区における住民参加による計画づくりの業務を担当する機会に恵まれた。この業務を担当して感じたことなどを紹介したい。
 本地地区は、瀬戸市の西の玄関口に位置し、現在、約5,400人(市の人口の4%)が住んでいる。この内、約100名の有志が集まり、平成8年から「本地の将来を考える会」としてコミュニティ活性化のためのまちづくり活動に取り組んできたが、活動が一過性になっていることや、他の団体との連携を図る必要性があるなど課題が浮き彫りになっていた。そこで、本地の将来を考える会が中心となり、地元自治会、PTA、老人会など12団体から構成される「プロジェクト本地21」を設立し、歴史・自然といった地域資源を活かしたまちづくりや、愛・地球博に向けた活動など、国土交通省の補助事業の指定を受けてスタートした。
 計画づくりの前半では、まちづくりの課題を抽出するため、タウンウオッチングを行った。タウンウオッチングでは、「なおしたい」「なくしたい」「のこしたい」という「3つのN」の視点でまちを観察し、その後、ワークショップにより議論を深めた。私は、事前にどういったまちづくりの課題があるのか地域をみて回ったのだが、これといって何も見つけることができなかった。ところが、実際に住民が地域を歩き、議論することによって、「不法投棄が目立つ」「田んぼが多く、カエルやザリガニがいる」「道路わきに花を置くアイデアが良い」といった思いもよらない意見が出てきたのには驚いた。
 計画づくりの後半では、前半の議論を交えて既存の取り組んでいる活動を参考にしながら、「何が自分たちで実現できるか」等について議論が行われた。私は、まちづくりの課題が多く、何から手をつけて良いのか戸惑うのではないかと思ったが、住民から「町内会や地域住民が主体となって、各町内で草刈やゴミ拾いができるのでは」「行政や地域住民が主体となって、川で子どもが遊べるイベントが開催できるのでは」といった意見が出され、住民が前向きにまちづくり活動に取り組む姿勢が伺えたことから、不安が吹っ切れた。
 また、地域の行事と近い日に、ワークショップが開催されることが多く、開催日当日、参加者が集まるかという不安があったが、10回近くワークショップや会議が開催されたにも関わらず、平均して25名前後と多数の参加があったことにより、地域住民の熱意を感じた。
 今後、計画づくりも大詰めに入り、具体的に取り組む活動について詳細に検討する予定である。この計画づくりがきっかけとなり、まちづくりの活動の輪が広がっていくことを期待したい。
 私は、始めて住民参加によるまちづくりに現場に立ち不安も多かったが、住民が熱心に計画づくりに打ち込む光景を見ていると生活の当事者である住民が、誰よりもまちづくりの課題や解決の方法を知っているということを、肌で感じることができた。
 今後、1人1人の住民の声に耳を傾ける姿勢を忘れず、住民参加の方法や意義を常に問いかけながらこの経験を活かしてまちづくりに取り組んでいきたいと思う。

タウンウォッチングのひとコマ。
本地川沿いの田園風景を眺める。



日ごろまちづくりの活動に取り組んできたためか、
より熱の入った議論が行われた

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