スペーシアレポート

安心・安全のまちづくりとコンサルタントネットワーク

石田 富男

安心・安全住宅市街地ネットワーク会議

 愛知県においては、東海地震にかかる地震防災対策強化地域が県下の多数の市町村に拡大されたことから、防災対策が緊急の課題としてあげられ、市民の関心も高まっている。しかし、実際のまちづくりにおいては、地震の際に大きな被害が予想される密集住宅市街地の整備はなかなか進まず、東京や大阪に比べるとその数は少ないとはいえ、大きな課題が先送りされてきたといえる。
こうした中で、愛知県の住宅マスタープランにおいて8つのチャレンジプロジェクトの一つとして「安心・安全モデル住宅市街地の整備」があげられ、これに基づいて「安心・安全住宅市街地ネットワーク会議」が設置され、地震などの災害に対しても安心して暮らせる住環境の整備とコミュニティの再生を促進するための検討が始まった。
 このネットワーク会議には、学識者や行政の担当職員とともに、まちづくり専門家としてコンサルタント5名が加わっている。この5名は、愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会(愛知まちコン)からの推薦を受けたものであり、私も委員兼事務局として参加している。

愛知まちコンとは

 愛知県を拠点として住まい・まちづくりに関わるコンサルタントが構成する組織で、1999年11月に設立した。コンサルタントの職能確立と専門能力の向上、地域貢献を目的として発足したものであるが、私はコンサルタントのネットワーク形成が大きな意味を持つと考えている。
 というのは阪神大震災の際に、関西のコンサルタントがすばやい動きで各地の復興の支援ができたのは、その前からいろいろなネットワークが形成されていたからという印象があり、名古屋で大震災が起こった時に関西のコンサルタントのような動きができるだろうか、という懸念から、ネットワーク形成の必要性を感じていた。今のところ愛知まちコンの活動としては、交流会を通じた研修・交流が中心であり、ネットワークを活かしたまちづくりの展開までには至っていない。
ネットワーク会議は、行政と学識者、コンサルタントが一堂に会する場であり、新しいまちづくりの取り組みの方法として期待したい。

密集市街地の整備をいかにすすめるか

 愛知まちコンでは、今年度のテーマを「安心・安全」とし、秋の公開シンポジウムでは「大丈夫か 東海地震」と題してパネルディスカッションを行った。ここでは「家」と「地域コミュニティ」の重要性が指摘され、日常的なまちづくりが大規模な震災の際にも大きな力を発揮することが語られた。
 ネットワーク会議においても、まちづくりとして取り組むことの重要性が指摘され、進め方等について意見交換が行われている。
密集市街地の整備は行政が本腰を入れて取り組まないと進まない。地震による被害を最小に抑え、すみやかに復興を進めるためにも今の段階からの取り組みが重要である。コンサルタントのネットワークによって行政の動きを後押しするような仕組みを構築していかねばと思う。

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