スペーシアレポート

活かすブロードバンド

藤澤 徹

 昨年以降、ますますブロードバンドが主流になるなかで、各業界ともに如何に太いラインを使いこなすかどうかのコンテンツづくりがテーマとなっている。企業は独自のサーバーのバックボーンを強化してさまざまなサービスを開始している。ブロードバンド加入者はオンデマンドを利用した、映画の配信や音楽などのサービスを受けている。その一方で市民レベルでは、あるいは実際にまちづくりのレベルでは昨年どのような変化を遂げてきたか、コミュニティサイトとともに検証したい。
 なごやネット(nagoyanet.ne.jp)では昨年新たに、まちの情報をブロードバンドで配信する、「なごやネットTV」を開局した。これまでにいくつかの商店街と、名古屋圏のものづくりに関わる職人さんを紹介してきている。いずれも実験段階ではあるが、次年度以降、投稿による取材やユーザー発信にようまちの動きをそのまま配信していく予定である。

 福岡県と大分県を中心に展開している老舗のコアラ(coara.or.jp)のコアラTVでは地元のシンクタンクである九州経済調査会と協働でコンテンツを制作しており、テレビでは放映しないような、より詳しい地域の情報や、九州全体の動向を毎日更新している。今後ともエンターテイメントはもちろん、専門的なニーズも受け入れていくとのことである。
 基本的なインターネットの特性を、そのまま活かしているのは世田谷ネット(setagaya.net)が運営している「東京糸テレビ」ではないだろうか。彼らは、個人放送局を基本として、実際にモバイルシステムでまちに出てライブな情報をそのままユーザーに届ける活動を続けている。週末の放送では、定期的に、現在活躍している人を、スタジオに招いての若者との対談や、活動拠点である世田谷の、とあるお店の店主からのお客さんへの呼びかけを動画で配信している。開局から1年近く経つが、アクセス数も順調に伸びており、今では放映中は世田谷地区の他のコミュニティサイトの掲示板で内容の議論が沸き立つまででになっており、母体である世田谷ネットを含め、世田谷のバイブル的な発信基地となってきている。
 さて、ブロードバンドは表現の範囲を広くしてくれた。次の問題はそれでいったい生活の何が変わったのかということである。実際にはほとんど変わっていないようである。家庭レベルでは映画をみることが可能となり、あるいは、重い画像をお互いが送受信できるという程度であり、ビジネス的には唯一大手のサービスプロバイダが課金制で成り立っているだけである。市民活動レベルのコンテンツで実際に必要な情報として成り立たせるためには更なる成熟が必要である。
 ニーズにこたえながら如何にビジネスにつなげて、運営を継続してくことに焦点を当てければあならない。ITバブルがはじけた今、企業も行政も莫大な予算をコンテンツ会社に投資するということはありえないだろう。しかし、日常的に絶対に必要コンテンツということになれば話は違う。能動的あるいは受動的に受け入れたいまちの情報、これらを如何に編集して、送り届けるかにヒントがある。マスメディアとしてではない期待がブロードバンドにはある。なごやネットの活動として今年更なる飛躍を目指したい。


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