スペーシアレポート

ようこそ やきもの王国へ セラパク2001

竹内郁

 東海地区の主要なやきもの産地が集い、「やきもの」をキーとし、2005年日本国際博覧会および中部国際空港のインパクトを最大限に生かしたまちづくりについて、研究を進めている「やきもの産地交流・連携推進協議会」が、平成13年もイベントを行った。この協議会は平成10年に発足し、岐阜県は多治見市・土岐市・笠原町(美濃焼)、愛知県は瀬戸市(瀬戸焼)・常滑市(常滑焼)、三重県は四日市市(萬古焼)の五市一町の自治体若手職員を中心に、活発な活動を行っている。県境を越えての活動は時間や距離の上で制約も多いのだが、メンバーの熱意とパワーで、イベント開催に至った。

やきものをキーワードに

 イベント名は「セラパク」。2005年の国際博覧会・中部新国際空港開港という二大プロジェクトの効果を共有するとともに、地場産業「やきもの」を全国・世界に発信していくことをテーマとした。開催日時は昨年の10月6日・7日の土日2日間。日程は昨年度末に決定され、その後、会場選択・設営準備が月1回の協議会で着々と進められた。
 イベント効果が五市一町だけでなく、大消費地である名古屋を中心とした地域共有の財産となることを願い、会場には、日常的に多くの人々が行き交う場所としてナディアパークのアトリウム(名古屋市中区栄三丁目)が選択された。

セラパクサミット「やきもの地域連携と万博」

 一日目の目玉とされたのは、五市一町の首長が博覧会協会総長代理の安井俊夫氏を迎えて開催した「セラパクサミット」である。各首長が博覧会を契機としたやきもののまちづくり構想を披露し、安井総長代理も「博覧会は伝統的なやきもの文化を再評価する機会である」と応えた。
 二時間にわたる議論の最後には、六自治体が産地間の交流・連携をさらに推進し、地域の飛躍を目指すことを宣言する「共同宣言」が発表された。

アイディアの競演

 ナディアパークのアトリウム、10m×16mのイベントゾーン(加えて、約7階分の吹き抜け)という大空間をいかに、使い切るか。メンバーの間で活発な議論が交わされた。都心の施設における集客は、目的を持って訪れる人よりも、たまたま訪れた人をいかに引き込むかが課題である。地域の資源「やきもの」の魅力には自信があるが、その魅せかたには工夫が必要であるというのが論点となった。
 そこで静と動、二方向の魅力付けが提案された。まず、静の企画として「企画展 万博とやきもの」、そしてエコ食器やリサイクルタイルを用いた、ライフスタイルの提案「テーブルコーディネート・ガーデニング」。各市町が産地業界に協力を呼びかけての展示である。
 動の企画としては、マグカップへの絵付け等の「体験コーナー」オカリナ奏者渡辺敬一郎氏を招いての「夕暮れコンサート」、そして四日市のお茶を各産地のやきもので飲んでもらう「呈茶サービス」等である。
静動双方の企画を煮詰めるにつれて、「よりリアルにするためにガーデニングに池を作ろう」、「呈茶サービスのコップは使い捨てはやめて、各市町やきものを持ち寄ろう」などと、次々にアイディアが出されたのが印象的であった。また、首長サミットにおいても、各首長の飲料水用に、美濃焼・瀬戸焼・常滑焼・万古焼のマグカップが並べられ、メンバーのやきものへの愛情、細やかな気遣いが感じられた。

地域との連携

 今回のイベントにおける、新しい試みとしては、地域FMとの連携があった。名古屋市中区を中心に放送されている「FMダンボ」への情報提供を行い、瀬戸市職員のS氏とN氏が、イベント一週間前と当日に番組に生出演し、セラパクをPRした。(DJを務める吉本の芸人を圧倒するほどのエンターテイナーぶり)イベントの一環として行った不用食器の資源回収には、名古屋市内の商店街と、「FMダンボ」のスタジオで集められた陶磁器食器が、番組DJによって持ち込まれた。イベント会場からの生中継は、主催者・参加者双方のテンションを高める上で一役買ったのではないかと思われる。

連携・交流具体事業に向けて

 愛知県・岐阜県・三重県の県境を越えての、連携・交流は、協議会参加メンバーにとって、決して容易なものではなく、イベント「セラパク」の開催にあたっては、相当の苦労をされたことと思う。その結果、メンバーの間には信頼感が生まれ、その経験は大きな財産となった。
 若手職員の意気込みをイベントで終わらせるのではなく、いかに今後の具体的な連携・交流事業につなげていけるかが、この協議会の成否を分けることとなろう。地域が独自の智恵で連携し何かを生み出そうとする試みに注目するとともに、大きな期待を寄せたい。

介護用食器やリサイクル食器も
「使いやすく、美しい」ことをPRした展示


各市町のエコタイル・ブロックをセンスよく
配したガーデニングコーナー。
メンバーの汗と涙の結晶。



大人気のやきもの体験コーナー。
子ども達の感性の豊かさには、主催者もびっくり。


江戸時代末期以降に、海外輸出用に作られた名品の展示。
絢爛豪華な作風に思わずため息。

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