特集 名古屋の都心考

ものづくり文化の道 西区

山内豊佳

 名古屋市西区では「特色ある区づくり推進事業」として現在、「ものづくり文化の道」づくりに取り組んでいる。西区には様々な歴史・文化資産や産業資産が残されているが、そのお宝たるもの、実は錚々としたものである。
昨年度、この「ものづくり文化の道」を訪問する人々にとってどのような評価が得られるのか、一つのルートを構成し、40名のメンバーの公募による、モニタリング事業を行った。

職人技のお宝

■名古屋友禅………尾張藩主宗春の華やかな時代に、京都などの絵師、友禅師が技法を伝えたことに始まる。友禅といえば京都、加賀が有名だが、多色を使った華やかなそれらに比べ、名古屋は単彩濃淡を特徴としたシックなものが多い。 
私も友禅なら断然名古屋友禅だと思うが、意外と市民に知られていない。

■名古屋扇子………実は名古屋は京都と並ぶ屈指の扇子産地であり、全国シェアは約3割を占める。
扇子には末広がりの意味もあり、名古屋では、よく夏のご挨拶代わりに扇子を配るメーカーがあったが、それが、この所以なのだろう。

■菓子製造・菓子問屋………明道町や新道周辺には菓子メーカーや菓子問屋が集積している。その歴史は江戸時代にさかのぼり、全国の3割を占めた時代もあった。菓子の高級化、多様化の消費者嗜好で、業界は苦しい状況にあるが、菓子工場もまだ一部残っている。実は私はこの問屋町の生まれで、今も親戚が頑張っている。菓子問屋は、決して消してはならない名古屋の魅力である。
*お勧め駄菓子HP(キャラメル横丁)
http://www.carayoko.com

産業のお宝

■産業技術記念館………旧豊田紡織本社工場である。残された大正時代の赤レンガの工場建屋を保存しながら、産業技術記念館として改装した。時代を担う人々の"ものづくり"に対する大切さ、素晴らしさを広げようという高い目的を持つにふさわしい美しい建物である。去年のラバダブでもまちんなか演劇祭の舞台として紹介した。

■ノリタケの森………ノリタケが創業百周年を記念して、旧工場の跡地に「ノリタケの森」を整備し、2003年までの二期に亘り、産業観光スポット「ノリタケ スクエア イン ナゴヤ」を誕生させる。

街並みのお宝

■歴史街道・美濃路………江戸時代、東海道宮の宿と中山道垂井宿をつなぐ連絡路として整備された。庄内川に枇杷島橋が架けられてからは、枇杷島の青果市場(西枇杷島町)と城下との往来でにぎわいを見せていた。ここには現在でも歴史的街並みが残っている。これらを活かした住まい・まちづくりや歴史的建築物や史跡の保存・活用・掘り起こしなどに取り組むべく、市民団体が活動している。

■円頓寺商店街………名古屋の城下町形成とともにできた街で、四間道と呼ばれる土蔵群、旧商家や屋根神、子守地蔵尊など、歴史文化資産が今なお存在する。現在、定住人口の減少や名古屋駅前の商業集積の影響を受けて、活性化が課題となっている。
今回ツアーでお邪魔した山英さんは名古屋唯一の量売りをしている店である。ご主人は実は「お好みソース」の発案者でもある。
*「名古屋ネット・名古屋びと」参照
http://www.nagoyanet.ne.jp

産業観光のお宝へ

 「ものづくり文化の道」への取り組みは始まったばかりである。地域資源の掘り起こしも十分ではなく、おそらくはもっとお宝は埋もれているのだろう。
 今回のモニターの評価は全般的に高く、自分たちの街の身近なお宝の存在に驚く参加者が多かった。「是非残してほしい」、「もっと紹介してほしい。」こういった声に応えるためにも、まず伝え、評価していくことが始まりである。その上で、技術職人や企業の協力、また参加しやすい仕組みを構築していくことが必要になる。
 そして下町の活力!円頓寺商店街の活性化は地域にとって大きなテーマである。西区の持つものづくりのお宝を、商店街でも巧く表現できるのではないだろうか。また、西区は、専門学校が比較的多く存在する。若い力と商店街のおっちゃん達との活性セッションも狙いたい。
 昨年秋のノリタケの森がオープンして、産業技術記念館とともに二大産業観光拠点が西区に隣接して揃った。これをチャンスに「ものづくり文化の道」が名古屋の特色ある観光資源として、とにかく「お宝」がまずは注目を浴びるよう!一地元民としても大きな夢を見ている。

名古屋友禅工房

明道町 駄菓子問屋街


産業技術記念館 糸巻き実演


モニター参加者 見学の様子

一般モニターによる ものづくり文化の道コース 

駄菓子・駄玩具問屋

菓子工場見学

円頓寺商店街(溜まり醤油はかりうり量売り店)見学

産業技術記念館とノリタケの森紹介

産業技術記念館内見学

名古屋友禅の製作工程見学

名古屋扇子製作工程見学

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