海部津島広域行政圏女性担当者研修会

女性の感性を生かした観光まちづくり/伊藤彩子

 近年、生活や余暇に関連した住民活動は市町村の区域を越えて広域化しています。これを受け、愛知県でも、いくつかの市町村ごとに「広域行政圏」を設定し、広域的なまちづくりへの取り組みを推進しています。そのうちのひとつである海部津島広域行政圏は、豊富な歴史的・文化的資産を有している地域であるにもかかわらず、これらの資産が十分に活用されているとは言い難い状況にあります。そこで今回、海部津島それぞれの地域の歴史や文化、味どころを再発見し、ゆとりあるまちづくりを考えるにあたって、女性の生活実感と感性を生かそうと、広域行政圏の1市12ヶ町村から、ひとりずつ女性職員が参加しての取り組みがなされました。市民活動とは言えないまでも、利用者・消費者としての一市民としての女性達による試みとしてご紹介いたします。

 平成10年8月から9月にかけて、合計3回の会合が、ワークショップ形式で開かれ、第1回目は、「海部津島の滞在型観光計画」について、第2回目以降は「海部津島の特産品開発」をテーマに意見交換がなされました。

 「滞在型観光計画」では、愛知県や三重県など、海部津島の周辺に住む人たちに、一泊二日や二泊三日などの日程で、この地域の魅力を感じてもらえるような観光ルートを考えようというもの。13人の女性職員が二班に分かれ、模造紙とポスト・イットを使って知恵を出し合いました。若い女性の感性から、「夏は木曽川沿いでキャンプ」など思わね新鮮なアイデアがいっぱい飛び出し、ゲスト審査員の方からも、「若い人にはお洒落な店、年配の人には郷土料理の店など、旅行者が選べるようになっているプランなんて、いいですね」などの評価をもらいました。

 第2回目以降の「海部津島特産品開発」では、「もろこずし」(「もろこ」という小さな魚を骨まで柔らかく煮込んで押し寿司にしたもの。甘い。)や、れんこんの砂糖漬け、はすウェハースなど、この地域の特産品を試食しあいながら、ひとりひとりが考えてきた、新しい特産品を発表しあいました。

 「金魚が有名な弥富町にちなんで、ガラスでできた金魚ピアス。」「七宝焼の小皿とかアロエゼリーなど、地域の特産品をミニサイズにして詰め合わせた『がやがやセット』。名前は地元の方言にちなんで。お正月に売り出すなら、海部津島のすごろくもつけたら。」「甚目寺町の萱津神社は、漬け物の神様。参拝者が地場の野菜を持って来て神社で漬け、翌年に、一年無事に過ごせたというお礼も兼ねて受け取りにくるようにする。」「海部津島を横切る西尾張中央道に、特産品を売る『道の駅』をつくる。イベントの開催も。」「飛島村はほうれん草の産地。ほうれん草広場をつくって、ほうれんそうクッキーやほうれんソーセージを売ったら。」など、考えただけで楽しくなるようなアイデアがたくさん出されました。

 3回の集まりを終えて、参加した女性職員の方々からは、「みんなが色々な意見を持っているということがわかったし、みんなで何かをつくっていけたらいいと思いました。」「研修はたくさん経験しているけど、いつも話を聴くだけで、自分たちでアイデアを出せる機会ってありませんでした。突拍子もない意見でも、少し捉え方を変えればすごくいい意見になることもわかってよかった。」「今までの研修会で一番楽しかった。自分の地域を見つめ直すいい機会になりました。」「これからも続けていきたい。」などの感想が聞かれました。

 女性ばかりが集まった今回の取り組みにおいては、斬新な角度からの意見を多く得ることができたようです。彼女達のアイデアをこれからどう生かしてゆくかを考えるとともに、このような試みをひとつのステップとし、民間・市民を巻き込んだまちづくりへと発展させていってほしいと思います。

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