「人にやさしい街づくり連続講座」

〜次々と新たな市民活動が誕生する、街づくりに関する情報の宝庫〜/浅野 健

人にやさしい街づくり連続講座とは

 人にやさしい街づくりとは、従来の健常者のみを対象とした都市計画・街づくりとは違い、障害を持つ人、お年寄り、子供などを含め、すべての人が安心して暮らし、気軽に外出できるのを目的とする街づくりである。国においては1994年に「ハートビル法(高齢者・障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)」が、その2年後には愛知県でも「人にやさしい街づくりの推進に関する条例及び施行規則」が制定されている。しかし、人にやさしい街づくりの考え方はまだまだ行き渡っているとは言えず、その実現には課題も多い。

 そこで愛知県では、まちづくりを直接担う人、指導・支援する人の育成を目的として、1995年度より「人にやさしい街づくり連続講座」(以下、連続講座)が行われるようになった。連続講座終了後、受講者は「人にやさしい街づくりアドバイザー」として登録される。

連続講座の目玉―グループスタディで街づくりにおける共同作業を体験

 本年度の連続講座は、6月〜8月の原則的に毎週土曜日行われた。受講者はまちづくり、建築士、福祉に携わる人、障害を持つ人、自治体職員、学生など多彩な顔ぶれで年齢も様々である。受講者50名は、あらかじめ10名ずつA〜Eと五つのグループに分けられ、講義後のグループ討議等はグループごとに行う。講師の方々は学識者、活動を行っている市民など様々で、講義の内容も交通・医療・福祉・まちづくりなど多分野にわたる。さらに、車いすに乗って街を点検する現地スタディー、こんな街にしたいというイメージを描く街づくりゲーム、など単に講義を受けるだけの通常の講座とは違い、内容が盛りだくさんである。そして連続講座の目玉は、なんといってもグループスタディーである。それぞれのグループがこの講座で得られた情報を参考にしてテーマを決め、実際に街に出て街を点検し、議論し、レポートにまとめて提案まで行う。7月中旬〜8月中旬という夏の盛りに、仕事や授業の合間を縫って、講座以外の時間にも集まってスタディーを進める。8月下旬にはグループスタディの発表会があり、会場には受講者以外にも参加者が訪れた。まさにこのグループスタディを通じて、実際の街づくりにおける共同作業をアドバイザーは体験するのである。

次々と新たな市民活動が誕生する、街づくりに関する情報の宝庫

 この連続講座の良さは、第一に、次々と新たな市民活動が連続講座から誕生していることである。今年で四回目を迎える連続講座では、グループスタディを継続しているケース、違うグループの人が声を掛け合って発足した研究会、同じ地域に住むアドバイザーどうしが集まった研究会、などそれぞれ問題意識を持って取り組んでいる。連続講座は街づくりをする上で重要な「人と人とのネットワーク」をつくるのに活用できる。

 第二に、連続講座は街づくりに関する情報の宝庫である。多彩な講師から得られる情報や、年齢も職種も違うメンバーから得られる情報など、実際に街づくりに役立つものが多い。また、知人からこの講座を進められて受講した人も多く、連続講座が口コミで伝わっている。

 連続講座終了後も研究会活動や街の点検などを続けていると、人にやさしい街づくりは奥が深いことを感じる。特に高齢者と障害者、視覚障害者と下肢障害者などそれぞれの立場で要求されるまちづくりは違う。誰もが安心して暮らせる街を実現するために、街づくりに関心のある人は、ぜひこの連続講座を受講してもらいたいものだ。

1998年度Dグループ グループスタディ「地域で暮らし続けるために 〜高齢者の住まい方の選択〜」

 筆者が所属したDグループは、高齢者の生活を家族や自分の問題として捉え、施設ではなく地域で安心して暮らすことを目的とし、近年増えてきたグループホームをはじめとする高齢者の住まい方について調査を行いました。40歳以上を対象に名古屋市内及び近郊の福祉施設等で行ったアンケート(総数221人)では、ほとんどの人が今の街に住み続けたいと答え、特に高齢者を支える4050代の人が「親しい人との共同生活も考える」と答えていました。

 しかし、現状ではこれらの情報が不足しています。市民レベルで情報が得られるよう、地域の福祉を担う組織(例えば社会福祉協議会など)において情報提供のシステムの確立が必要だと実感しました。

参考:グループスタディの内容

■人にやさしい連続講座から本が誕生しました

「お姉ちゃんと同じ学校に通いたい!〜ハンディをもつ子と親のためのガイドブック〜」

人にやさしい街づくりアドバイザーグループ/五十嵐真澄・鬼頭弘子・星野茂子+星野広美

96年Eグループのスタディがきっかけで調査を続けたグループが本を発行。

<内容−県下の情報に限られています>

  1.ハンディをもつお父さん、お母さんからおはなしを聞きました

  2.ハンディをもつ子たちが出会う人たちに聞いてみました

  3.ハンディをもつ子たちのためのいろいろな資料

  4.ハンディをもつ子たちのためのいろいろな街のデータとネットワーク

        五十嵐真澄 Tel/Fax:052-991-6860

        鬼頭弘子 Tel/Fax:052-791-8518  E-mail:QZB02660@nifty.ne.jp    

目次に戻る