地区のまちづくりと名語録:滋賀県伊香郡高月町雨森地区加藤達志

『雨森の話をしたら、「明日から会社やめてまちづくりをする」という人がいた。「いらんこと言わんとこ」と思ったね』

 これは「雨森まちづくり名語録」(平井茂彦氏著・平成10年3月発行)の一文である。この本は、自治会によるまちづくりで有名な滋賀県伊香郡高月町雨森地区の住民や当地区を訪れた人が発した他愛のない言葉を、名語録集として綴ったものである。筆者が書いた文章は「まえがき」だけであり、後はひたすら名語が一ページに四つ五つ載っているだけのいたってシンプルなものである。

 高月町は、琵琶湖の北部に位置し、北陸自動車道木之本Icからほど近いところにある人口1万人強の小さなまちである。その高月町の北東部に雨森地区があり、地区の人口520人、115戸の純農村である。

 雨森地区を訪れたことは今回(平成10年11月)が初めてであり、「花のまちづくり活動」を盛んに行い、数々の賞をとったことがあることは知っていたが、それはあくまでも自治会によるまちづくりの結果のひとつであることに驚かされた。訪れたまちの様子は、緑豊かな集落の中をきれいな用水路が流れ、そこに大きな鯉が泳ぎ、用水路の所々に水車や花が飾られているきれいな農村といったイメージである。

 雨森地区では、15年ほど前から時代の流れ等による住民同士のつながりの喪失を危惧し、青年会の呼びかけにより、スポーツを中心とした様々なイベントを通じて住民参加を呼びかけた。その後、地域のまちづくりへと発展し、集落を流れる用水路を活用した花のまちづくりのみならず、地元の儒学者であり朝鮮との外交等に活躍した「雨森芳洲」を讃えて始まった韓国、北朝鮮、中国など東アジアの国々との文化交流や友好親善、区民の約八割が参加する「雨森区民大運動会」、既に750回以上発行されている「区報あめのもり」など様々な活動を行っている。視察者の数は年間約3万人、今では修学旅行で訪れる学校もあるようだ。

 その雨森地区のまちづくり委員会長を務める平井茂彦さんは、高月町の職員であるが、雨森地区の住民としてまちづくりに参加している。その活動の中から生み出された本が冒頭でも記述した「雨森まちづくり名語録」である。ここでその一部を紹介しよう。

【住んでいる人の名語録】

【訪れた人の名語録】

 まだまだこれはほんの一部である。この名語録は、行政としてまちづくりに関わる方、まちづくりの活動をしている住民の方、コンサルタントなど、まちづくりに関わっている人全てに参考になる本であろう。ぜひ一度、雨森地区を訪れてからの、ご一読をお勧めする。

連絡先 滋賀県伊香郡高月町雨森1587 TEL0749-85-4392 平井 茂彦

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