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ワークショップを活用した住民主体のまちづくり・公園づくり−
   大曽根北地区「六郷北がったい公園」での試み

浅野 泰樹

 近年、ワークショップ方式によるまちづくりが話題を呼んでいる。我が社にも、そうした手法を活用しての地域住民参加型のまちづくりコーディネータ業務の依頼が増加している。当社の一部門として取り組んでいる市街地再開発事業(組合施行)の分野では、ワークショップという表現を用いていないものの、権利者の合意形成手法として同様な試みは以前から行われてきた。しかし、大きな違いは、市街地再開発事業では、参加の主体が施行地区の権利者全員に特定され、長期にわたり権利者間の意見調整を図りながら、合意形成をめざすのに対して、まちづくり・公園づくりでは、地域が限定されるにしても、地域住民の意識レベルや時間的制約条件の中で、参加の主体が不特定にならざるを得ず、また原則として単年度内に一定の成果が期待される点にある。商店街の活性化、老朽建物の改善や自己資産の有効活用等を直接的な動機とする再開発では、権利者は、利害が直接影響するために主体的に討議の場に加わろうとする意識が働きやすい。一方、まちづくりや公園づくりは、住民にとって日常生活に大きな影響を及ぼさない事象であり、まちづくりに関するこれまでの諸制度が住民の主体的な関わりをあまり重視してこなかったことも遠因となって、行政の行うものと住民が受け身になりがちである。

 少しでも多くの住民が共通の場を体験する過程を通して、意見の交換と調整を行い、まちづくり・ものづくりを達成する充実感を味わうことは、まちづくりの楽しさと関心を呼び戻し、真に住民が主体的にまちづくりに取り組んでいく上の第一歩として重要な意味を持つと考えられる。創造的なワークショップの試みは、その一つといえる。

 ここでは、大曽根北地区での「六郷北がったい公園」完成までの2年間にわたるワークショップの試みを簡単にレポートする。

 初年度は、まちづくり協議会のリーダーにワークショップとは何かを理解してもらうため、リーダーと整備予定地隣接の住民とにより、小さな公園づくりに取り組んだ。リーダーの中にも当初、「何故こんなことをするのか」、「公園は市が造るのではないか」との声も聞かれたが、ワークショップの回数を重ね、自分達の意見や考えが公園に生かされることが徐々に解ってくると、議論も真剣になり、扱ったこともない三角スケールを片手に、公園のプランづくりをするにまで至った。時間的な制約や公園の面積規模の条件もあり、リーダー達が充分満足できる設計とはならなかったものの、ワークショップの楽しさとその結果として自分達の意見が少しでも取り入れられた「花と緑いっぱいの公園」が完成したという充実感を体験したようであった。

 それが生かされ、2年目には、六郷北コミュニティーセンター横の公園整備に対して、協議会からも色々な意見を取り入れ、センターと一体となった公園づくりをめざしたいとの希望が出され、一般住民や子供達を対象としたワークショップを展開することとなった。

 いかに多くの地域住民が参画できる状況を作るかがワークショップの大きな課題である。その点、本地区は、恵まれていたのかもしれない。これまで、コミュニティセンターを中心に活発な活動がされていた。リーダー達が裏方となり、コミュニティ活動の一環としてワークショップに合わせて、地域イベントを開催し、住民が参加しやすい環境を作り上げた。我々も市職員と一緒になり、単なる人集めのイベントではなく、まちづくりと関連した地域独自のイベントとして、演劇「ワークショップって何?」、「六郷北まちわかる頭脳パワー」と題する街の風景を活用した「六郷北でビンゴ」や街の魅力要素を活用した「連想!ご近所物語」などのゲーム、地域のベーカリーの協力を得た「クリスマス・こうえんケーキづくり」などを展開した。その仕掛づくりのための準備には相当の労力を要したが、参加者には満足の得られるものとなった。

 公園の設計には、住民の参加した証を残し、それを継続的に運営・管理して行くための仕掛も用意された。子供達が街の資産となる公園を自分達で考え・育てていく契機になることを意図し、小学生による絵タイル作成・設置や中学生の手によるシンボル・サークルづくり等がワークショップとして行われた。また、コミュニティセンター活動の野外化という観点から、休憩スペースを兼用した小さな舞台や作品の展示スペース等も提案され、実施に至った。住民達で特に意見調整が必要となった点は、子供達の望む遊具のある遊び場確保と多目的な広いスペースをコミュニティ活動の中で使いたいと願う大人の希望を狭いスペースの中でどう実現するかであった。当初は、協議会とお母さん達との意見対立も見られたが、議論を進めていく中でお互いの考えの理解が深まり、遊具の選定や配置等の変更により解決された。

 「六郷北がったい公園」の名称は、いろいろな意見が合体し、子供から老人までが一緒(合体)になって楽しめる公園でありたいと願う子供達の考えから生まれたものである。平成9年11月3日コミセンまつりに合わせて、公園のオープニング式典が開かれた。地元のアイデアによる「がったいもち」や「がったい汁」で参加者へのもてなしがなされ、公園づくりを契機にコミセン行事となった「子供創造教室」が青空のもとに開かれるなど、コミセン活動と一体となり、真に意味する住民主体の公園づくりの第一歩が始まった。