視察レポート
Report
建築学会都市計画委員会春の見学会「豊田市足助地区-中山間地域のまちづくり-」
建築学会東海支部都市計画委員会では30年ほど前から毎年春に見学会を開催しており、各地のまちづくりの現状を知るとともに、都市計画関係の先生方と知り合うよい機会となっている。スペーシアの歴史とほぼ重なっており、私は都合がつく限り参加している。参加者は大学の先生や行政関係者が多く、民間は少ないが、学会の強みというか、受け入れ側がしっかり対応いただけるので得ることは多い。若い人にもっと参加してもらえればとも思う。
今年の見学会は足助。ちょうど足助春まつりの試楽祭の日に重なり、花車の準備や巡行の姿も見ることができた。
見学会ではまず支所の会議室にて中山間地域の定住・移住の取り組みについて、おいでん・さんそんセンターの鈴木センター長からお話しを伺った。
センターの設立は2013年8月。鈴木氏が定年1年前に過疎対策を担当。都市と山村が互いの強みを生かし、弱みを補う中間組織の設立を提案。自らがセンター長として、いなかとまちの交流コーディネート、いなか暮らし相談窓口を豊田市からの委託事業として実施するほか、自主事業として「支え合い社会」の研究・実践を実施。今年度からはトヨタ自動車からの受託事業として豊森なりわい塾の事務局や里山くらし体験館の指定管理を受託している。
「山村を山村らしく磨き上げる」「都市で暮らせない人が山村に来る」「便利な山村に魅力はない」という言葉がセンターの取り組みを物語っている。職員が8名でその働き方は多様。人件費は5人分でブラック企業のようなという発言もあったがむしろ働き方改革の実践ともいえるのではないかと感じた。
センターの取り組みの成果として容易に見学できるものがないため、お話し終了後は伝建地区をまち歩きし、寿ゞ家へ。そこで地域人文化学研究所の天野代表理事にお話しを伺う。
豊田市との合併時には構想もなかった伝建地区が天野氏の熱意が地元に伝わることで重伝建選定につながったという話から、寿ゞ家の活用をはじめ、建物を購入し、クラウドファンディングや補助金に自費も加えて建物改修をするという経緯には参加者の多くが関心を示し、その後の建物見学でも興味深く見学していた。
私は4年前の愛知登文会の保存・活用講座に天野氏を講師としてお招きし、その事前打ち合わせで寿ゞ家を訪問していたが、その後の意欲的な取組に改めて感心。建物を所有したことで責任があるとの言葉は身につまされる思いがした。
見学会終了後はバスで40分かけて豊田市駅に戻りそこで懇親会。豊田市駅の東側は道路を廃止し、歩行者専用の広場に生まれ変わるという話しも伺った。超小型電気自動車のカーシェアなど興味深い取り組みも多い。豊田市の先駆的な取組みに注目していきたい。
(2019.4.22/石田富男)