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名古屋のサービス業も元気だ
 以前、建築系月刊誌出版社から「元気な名古屋が衆目を集めているので、特集を組みたい。ついてはトヨタ以外の元気のある企業文化とまちづくりについて寄稿してほしい」との依頼を受けた。東京から見ても、製造業の活性化や愛知万博開催・中部国際空港開港は、気になるところなのであろう。そこで私は次のような主旨の文章を書いた(データは最新に修正している)。

【トヨタはすごい】
  「トヨタ以外の」といってもトヨタ抜きでは、今日の元気さは表現できない。18.6兆円の売り上げと1兆円を超える純利益(税引き後)、トヨタ主要グループ10社を加えると売り上げは30兆円を超える。これまで名古屋経済を牽引してきた五摂家(中電、名鉄、松坂屋、東邦ガス、東海銀行)の売り上げは3.7兆円(東海銀行は現在ないので、それを除く)であり、いかにトヨタの存在が大きいか理解できる。(金額はいずれもH17.3期)

【名古屋発の元気な全国区サービス業】
 そんななかで名古屋発のサービス業が全国区で頑張っている。その代表的企業がコメ兵、ビレッジバンガード(VV)、ゲオ、USSの4社である。コメ兵は骨董品屋でもなく質屋でもない「スーパー・ディスカウント・リサイクル・デパート」であり、買値・売値の設定や中古品・新品の構成をいかにするのかが企業ノウハウである(本社名古屋市中区 売り上げ233億円 H16.3期)。VVは「『遊べる本屋』をキーワードに、書籍、SPICE(雑貨類)、ニューメディア(CD・DVD類) を複合的に陳列して販売する小売業」と自社を定義している(長久手町 113億円 H16.5)。ゲオは ビデオ・DVD・CD・ゲームソフト・書籍等を、レンタル・リサイクル・新品で提供する事業を展開している。いち早く全店舗を通信ネットワークで結び、過不足の在庫情報をもとに店舗間調整を行い、レンタル等の効率を高め、また全店舗で共通の会員カードが使用できるようにした。競合するtsutayaよりも早い(春日井市 1,511億円 H17.3)。USSは中古車のオークションの運営会社で、全国700万台近くのオークション台数のうち30%のシェアを確保している。オークションの手数料を得るビジネスであり、買い取り、すなわち在庫は持たない(東海市 424億円 H16.3)。

【サービス業の共通点と異なる立地傾向】
 コメ兵、USS、ゲオとも扱う商品は異なるが、リユース分野での新たなビジネスモデルを展開している点で共通している。VV、ゲオとも当地で得られたビジネスモデルをもとに全国で多店舗展開している。コメ兵やUSSは主要都市を押さえに入っている。企業文化の共通点を敢えて言うなら、「顧客第一」「お値打ち」「リユース」であろうか。顧客はそれを支持している。
これらの企業(店舗)の立地は様々である。コメ兵は都心界隈の大須で、VVはコアファンのための郊外展開(ロードサイド)とファミリー層取り込みのための大型ショッピングセンターのインショップで、ゲオは街の中心や郊外を問わず、居住人口密着型立地展開で、USSは実車展示を中心とするため広大な用地を必要とし、自ずと郊外で立地している。

【求められる都市の環境とは】
 生物の多様性を維持するためには多様な生息環境が必要である。企業の起業・成長も同様に多様なビジネス環境が求められる。表通りと裏通り、日向と日陰、混沌と秩序、この多様性を持っている都市ほど、新しい産業が生まれやすくて、都市の活力を維持できるのではないか。
「元気な名古屋」はトヨタだけでなく、このようなトヨタに比べて規模は小さくても全国展開する元気な企業が存在してこそ成り立つ。そして街の新陳代謝を促進する。そして都市は生き続ける。


 「名古屋の元気」は「トヨタの元気」と直結している。2万点以上の部品で構成される自動車はその産業の裾野は広い。他方、規模が小さいが着々と成長を続けるサービス業の存在も重要である。対消費者サービスは面白さ・楽しさを提供するものとして、街を活性化していく。これらの業態は消費者が直接支えるものである。これらサービス業の全国展開は「顧客第一」「お値打ち」「リユース」という名古屋スタイルの普及でもある。これまで名古屋はどちらかといえば、無視し得ない都市圏で揶揄の対象であったが、ようやく存在感のある都市圏へと転換してきている。例えば、これまで「ゲテモノ」とまで言われていた名古屋メシも東京へ進出し好評を得ているし、最近の日本語ブームで丁寧な名古屋弁は美しいと評価する本まで出てきている。
 ようやく名古屋の世紀なのだろうか?
(2005.5.30/井沢知旦)