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名古屋の透明建築

 近年の建築界では「透明」というキーワードをよく聞く。建築に限らず、iMacでブレイクしたスケルトンブームや、ガラス張りの知事室に象徴される「透明な政治」など、様々な分野で透明性が大きな価値基準となってきている。
 さて、名古屋でもここ数年、すぐれた「透明建築」が造られてきた。ミラーガラスなどで全面をガラス張りにした建築はいくらでもあるが、ここで言う「透明建築」は少し違う。例をあげると栄の「LOUIS VUITTON」(これが出来たときは「ついに名古屋でも流行の最先端を行く建築を造ってくれた!」となぜかうれしかった)、大津通りの「OPAQUE(オパキューではなくオペークと読むらしい)」、名駅の「オンワード」、伏見に近々完成する名古屋商科大学の大学院棟などである。これらに共通するのは外壁のガラスの内側に、少し空間を隔ててさらに壁を造るダブルスキン構造を採用していることである。このダブルスキンの隙間空間がぼんやりとした奥行きを感じさせ、幻想的な透明感を創り出している。
建築家が透明性を追求するのは、単にこうした表層の美しさを表現するためではなく、パラダイムが大きく変化しつつある現代社会に対応した、新しいコンセプトによる建築空間の創造を探求した結果であり、今後もこうした「透明建築」が増えていくだろう。
 「透明建築」は特に夜の表情が美しい。都市の雑踏の中に光のボイドが浮かび上がり、立体的なコラージュのように周囲とは異質な空間の存在を意識させる。しかしそれは言い換えるなら排他的な独自性の美しさであり、まちに「透明建築」が増えれば増えるほどその魅力を失って行くのである。これは近代建築の本質の1つであり、近代を基盤にした現代の建築によるまちづくりが困難であることを物語っている。
 夜は光も少ない名駅南の倉庫街に「オンワード」がにじむような光を放ち闇に際立つ様は、「透明建築」の旬を象徴している。


 (2001.7.10/堀内研自)