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ランの館

 ランの館は、文字どおり「ラン」という一種類の花を中心に見せるための公共施設であり、名古屋の都心部に今年の5月2日にオープンした。

●施設の主旨

 ランきちがいの外交官が都心に建てた迎賓館(ランの館)というイメージ。ちなみにランの日本一の生産県は愛知県。従来の植物園のように温室の中で見学するスタイルではなく、都心の中のオアシスとして、人が快適に花を楽しめるよう、空調が効いた部屋の中で見学するスタイルとした。

 計画入場者数は土・日・祝日2,000〜3,000人/日、平日700〜800人/日、30万人/年としていたが、オープン直後の5月3、4日は10,000人を超え、公園内は身動きできないほどの人であふれていた。    

●オープンまでの経緯

平成6年秋 プロポーザルにより日本設計に設計委託

平成7年  設計変更

 農政緑地局は当初、下水処理場の上部施設を建設する案を考えていたが、阪神大震災の影響で計画変更を余儀なくされ、下水処理場の上部は中庭・庭園とし、その西側を上部施設(ランの館)とした

平成8年10月〜平成10年3月 工事

平成10年5月 オープン

●視察を終えて…

 通常なら1時間もあれば全部を見て回ることができる施設で入場料700円というのは、「ラン」に興味のない人にとっては少々高いような気もする。しかし、「ラン」は何百種類とあり、さらに交配して新種を作り出すことも可能な植物ということや、吹上ホール(名古屋市昭和区)で「ラン展」を開催すると、連日超満員という話をよく耳にすることから、潜在的な「ランのマニア」は結構多いと思われる。また、最近のガーデニングブームもあって、そんな折りにオープンした「ランの館」はこういう人たちにとってはぜひ一度は行ってみようかと思う施設であろう。

 そこで、この施設に3つの点で注目した。まず、「ランの館」に来れば一年中「ラン」を見ることができるという点。これは、「ラン」好きの人にとっては格好の場所である(その分、ランを収集したり育てたりする職員の人たちは大変だろう)。次に、設計変更により館の部分が敷地内の西側に限定された分、ある程度まとまりのあるスペースとして中庭と庭園が確保できたという点。ここを有効に使って定期的にガーデニング教室をはじめとするイベントなどを行えば、リピーターも増えるのではないか。さらに、立地条件に恵まれていることである。都心にあることから、人が快適に花を観賞できるという従来の温室型の植物園では考えられないコンセプトでつくられており、2階にはレストラン(入場料は無料)もある。そこで、特に夏の暑い日でも買い物のついでに立ち寄る主婦層が訪れることも期待できそうだ。

 価値観の多様化がよくいわれる今日、どこにでもある植物園や多目的ホールもいいが、「ラン」という花に限定したこのユニークな施設にも注目したい。           

(1998.5.20/浅野 健)