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松阪市の景観まちづくりの取り組み
 日本建築学会東海支部都市計画委員会の春の恒例の見学会で松阪市を訪問した。 松阪市は松阪城を中心とした近世城下町として発展した歴史都市であるが、この城に近接する殿町に、地上7階建て(高さ26m)のマンション建設計画が突然持ち上がり、それに端を発して景観まちづくりに対する取り組みが急激に広がったという。その経緯について話を伺うとともに現地を見学する企画である。

 マンション問題については、自治会が中心となり、歴史的景観や観光が損なわれるとして、2万人の反対署名を集めるなどの活動が展開されたが、最終的には、6階建て(高さ22m)に変更されることで建築された。これを教訓として、今後このような事例を出さないようにするため、2005.10に地区計画推進委員会が立ち上げられ、毎週のように話し合いを続け、3ヶ月で原案をまとめ、市長に要望書を提出。2006.10には高さ12m(一部10m)や敷地面積の最低限度などを定めた地区計画が決定された。

 わずか1年間で40.5haという広い範囲で高さ12mという厳しい地区計画が合意されたことに驚くが、その背景にNHKの「ご近所の底力」にこの問題が取り上げられたことで住民の意識が高まったことがあげられるという。対象地区も当初の2地区から6地区にまで広がった。

 この問題と同じ時期に、もう1つ松阪の景観に絡む問題が発生した。御城番屋敷の二階建て家屋問題である。松阪といえば城から眺める御城番屋敷の眺望が定番の風景であるが、そこに2階建ての住宅が増築されたことによって、その眺望が失われてしまったのである。庁内関係各課との協議の結果、そこをポケットパークとして買収・整備されたが、たとえ二階建てであったとしても場所によってはそれが大きな問題になるという典型事例といえる。

 これらを通じて松阪市では景観に対する意識が高まり、景観マスタープランのとりまとめが昨年度行われ、2008年度には景観計画の運用を開始すべく取り組みが進められている。また、殿町の地区計画に隣接する魚町でも歴史的な景観を活かしたまちづくりの取り組みが進められている。まちを歩くと美しい生け垣の道が印象的である。まちの魅力を住民がしっかり認識し、それをみんなで守っていこうとしていることが伺える。さらなる広がりを期待したい。
建築されたマンション
2階建て家屋を買収してポケットパークに

美しい生け垣の道 赤いポストが印象的

(2007.4.27/石田富男)