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岐阜県立森林文化アカデミー
〜美濃市〜
 日本は国土の2/3を豊かな森林が占め、そうした資源を活用し生活してきた。しかし、この半世紀あまりで生活は一変し、森林との関係が希薄な生活をおくるようになってしまった。特に林業は安い輸入材に押され全国的に衰退しており、その結果、間伐作業などの手入れが行き届かない森が多く生み出されている。こうした森は土地が痩せ、土砂災害の発生する危険も増加するため対策が必要であるが、間伐作業の人件費は多くの補助金を投入してもとても賄えないのが実情である。「岐阜県立森林文化アカデミー」は山づくり、建築、環境教育を通じて、こうした問題を抱える日本の森林の活性化を目標に造られた専修学校である。

 アカデミーの建物はプロポーザルにより選ばれた北川原温建築都市研究所が担当し、すべてを県産材による挑戦的な木造建築がいくつも生み出されることとなる。この建物では間伐材をできる限り使用する工法が試みられている。外観の特徴となっている面格子は法的には認められないものの構造上重要な耐力壁となっており、すべて間伐材でできている。普通、こうした大きな木造建築では間伐材といってもそれを積層させた集成材を使用し、ジョイント部に金属の部材を多用するが、ここでは細い間伐材を仕口加工により組み合わせ構造体を形成している。こうした取り組みの結果、本数にして86,000本、約150haの森の間伐材を使用できたそうだ。しかし、これですら岐阜県が緊急に間伐を必要としている森林面積の15%にも満たないそうだ。

 建物の建設が間伐材の問題をすぐに解決することはできないが、アカデミーの卒業生は木造中心の設計事務所や工務店をはじめ、森林組合に就職する方も多く、日本の森林の問題について解決法を模索する人材を生み出している。ここを訪れることで、普段意識しなかった森林や木材についての根深い問題を改めて知ることができた。当日、たまたま在学中の市原さんという方とお話ができ、おもしろい解説をして頂いた。アカデミーの学生さんは建物や活動内容についていろいろ知っているので、見学される方は、気軽に声をかけてみることをお勧めする。







(2004.6.9/堀内 研自)