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「都市再生・街づくり学」 大阪発・民主導の実践 /大阪市街地再開発促進協議会 編

創元社/平成20年6月発行

 都市再開発法が制定(昭和44年)されて今年で40年を迎える。この間、全国各地で約720地区の事業が完成(平成20年9月時点)し、街づくり、都市再生の一翼を担ってきた。しかし、ここにきて再開発事業の現場では、100年に一度とも言われる未曾有の経済危機に見舞われ、事業計画がまとまらず事業化の目途が立てられない案件も多く出ているのではないだろうか。
 そんな再開発事業の歴史を“大阪”を舞台にとりあげたのが本書である。本書は、大阪の都市再開発に携わってきた専門家が集い、自身が経験してきた都市再生の現場での課題、対策、手法等を個別事例とともに紹介し、都市再開発法が制定される前後からの大阪の街づくりの歴史や今後の在り方を記している。
 本書の中で、大阪の街づくりの特徴は“民がつくった街”と記されている。首都が東京へ移る以前は、商人のまちとして栄え、首都移転後は鉄道、特に私鉄(阪神、阪急、南海、近鉄)による鉄道網が発達し都市圏が広がり、ターミナル駅を中心とした駅ビルの再開発事業が数多く事業化されてきた。さらに大阪らしいのは、その鉄道会社がこぞってプロ野球球団のフランチャイズ球場や娯楽施設を所有し、集客効果を上げてきた。しかし、時代の流れとともに、球場や娯楽施設は大規模開発用地へと転換され、結果としてそれらも大阪の民主導再開発を語る上で重要な要素にもなってきた。
 大阪の街づくりは、そうした独自の文化や大阪万博といった国際的イベント、さらに都市が成熟した中でおきた阪神・淡路大震災による復興等、名古屋にはない時代背景の中で構築されてきた。これまでに、大阪の再開発事例をいくつかみてきたが、本書により事業完成の背景を改めて知ることができ、事業に携わる者としては参考になる1冊であった。
 本書の名古屋版を作るとしたどんなものができあがるのだろうか。

(2009.4.27/村井亮治)