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転換するグリーン・ツーリズム 広域連携と自立をめざして/青木辰司著
学芸出版社 /平成22年5月10日発行

 グリーン・ツーリズムはもともと欧州で誕生※しているが、欧州では農村に滞在しバカンスを過ごすという余暇の過ごし方として普及してきた(※国によって、ルーラルツーリズム(英)、ツーリズム・ベール(仏)とも呼ばれる)。日本においては、農林水産省が平成4年にグリーン・ツーリズムという言葉を提唱し、全国にモデル地区を指定するなどして推進を図っている。
  本書のタイトルである「転換するグリーン・ツーリズム」の「転換」とは、わが国のグリーン・ツーリズムが「日本型展開段階」に入ったことを指している。日本でグリーン・ツーリズムが提唱されてから18年が経過し、西欧から理念や手法を学ぶ段階から、日本型のグリーン・ツーリズムが展開される段階にあり、西欧と比べて未だに脆弱な余暇文化事情や旅行としての収益を確保する商品化など克服すべき課題があるものの、農山漁村を舞台としたグリーン・ツーリズムの意義は今後高まることがあっても衰えることはないというのが著者の見解だ。
  本書の中で、著者は、転換期を迎えた日本型グリーン・ツーリズムにおける今後の課題として、@行政主導から住民主導への展開、A広域連携の実践、B重層的なネットワーク形成の3点を挙げている。特に、@住民主導への展開では、中間支援組織の推進・確立を示唆しており、その中で紹介されている岩手県遠野市の事例では、大学生を対象とした人材派遣事業や社会貢献カリキュラムの創設の必要性について説いている。特に高齢化した地域では、今後、若い人材に対する期待が大きくなっていくと思うが、継続的な人材の確保と活用の仕組みのあり方が重要になると感じる。
  また、日本型グリーン・ツーリズムについて、本書では「社会的自己実現型(農家民泊、農村民泊など)」「労働貢献型(農山漁村型ワーキングホリデー)」「学習型(ツーリズム大学)」「教育体験型(教育体験旅行など)」「資源活用型(滞在型市民農園、空き家・古民家活用など)」に分類している。それぞれ先進的な事例などをもとに具体的な内容と手法が説明されており、日本型グリーン・ツーリズムを実践するための参考本ともいえる。これからグリーン・ツーリズムを検討している地域にとっても参考になる1冊だと思う。

(2010.11.23/喜田祥子)