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「まちづくりびと−再開発合意ものがたり−」/
石原當市・大谷昌夫・加瀬敏二・ 木戸恒男 著

日刊建設通信新聞社/2011年5月31日刊

   先日、自ら賃貸ビルを建設し不動産経営を行っている、ある再開発地区のリーダーから「再開発はなぜこれほど時間がかかるのか、もっと素早く事が決められないのか、コンサルタントの対応が悪いのではないか」との相談を受けた。一人で住宅やビルを建てるときは、自分一人で判断し、その善し悪しの結果責任も自分が負うことになる。しかし、地域の多様な人々と共同してまちをつるときは、関係者(権利者や床を購入する事業者など)の異なる状況や意向を調整し、誰も損失を受けないように権利者の合意を一歩一歩取り付けていくことが、リーダーやコンサルタントに求められる。そのため、再開発は一朝一夕にできるものではなく、権利者との信頼構築を含め、時間が必要なことが多いと説明した。  本書「まちづくりびと」は、コンサルタント会社や建設会社の所属する7人の再開発コーディネーター(発行時点の平均年齢64歳)が再開発の現場で権利者の合意形成に奮闘してきた体験を、失敗談を含め、まちづくり初動期から完成に至るまでの段階をおって『人間ドラマ』としてオムニバスで紹介している。権利者対応での悪戦苦闘話は、コンサルタント仲間同士ではよく話題になるが、再開発のリアルな現場を「読み物」として著したものは初めてであろう。単なる権利者交渉のハウツー本ではなく、再開発を分かりやすく解説するとともに、合意形成の重要さ、そのための人と人との信頼関係構築に必要なコミュニケーションの重要さを問うている。  まちづくりでは、地域の人々の長い付き合いの中で人間関係をこじらせ、リーダー不信を招いていることも多い。また、若いコンサルタントの中には便利なツールに頼りすぎ「face-to-face」のコミュニケーションをおろそかにする者もいる。まちづくりにおける合意形成の重要さや人と人との関わり・応答からうまれる大きな成果、楽しさを知ってもらうため、まちづくり関係者に読んで欲しい一冊である。

(2011.7.4/浅野泰樹)