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稼ぐまちが地方を変える/木下 斉著

NHK出版新書/2015年5月10日

 著者の書籍は、書店の「まちづくりコーナー」で目にしたことは多いかと思う。
 本書は、今年の年始に発行した「RUBADUB」で書いた、弊社がこれまでに携わった再開発事業の紹介にあたり訪問した春日井市勝川商店街の店主の方から紹介を受けた。
 著者は高校時代からまちづくりの分野に関わってきており、その舞台は地域密着のまちづくりの先進事例で取り上げられ、リサイクル商店街、エコステーションの全国展開発祥の地である早稲田商店会で、当時の取り組みや人材ネットワーク構築によりまちづくりへの意識の高まりと考え方が培われてきたことなど紹介されている。
 リサイクル商店街は、十数年前に大きな話題となり全国展開をみせたが、著者はそのきっかけとなったイベントを早稲田大学キャンパス内で無償開催するために行政を巻き込み成功に導いた経緯や、エコ、環境をテーマにしたイベントを単なるイベントに終わらせず、事業としてしかけ、儲かるビジネスへと発展させながら地域の活性化を実践してきたこれまでの取り組みが記されている。
 また、いくつか全国事例が紹介されている中に前述の勝川商店街がある、商店街の古民家を活用して新たな拠点整備した事業が紹介されている。この事業の中心人物が冒頭に紹介した商店街の将来をみて再開発に取り組まれた商店主で、空き家となった古民家に予めテナントをつけ(文中では「先回り営業」と表現)、その賃料(収益)から建物改修費を捻出するリノベーション型シェア店舗を展開している。さらに次の展開として、商店街で土地を取得し、テナント賃料を前提にした投資(建設費)により上物を整備し、近日オープンの予定で、その事業の仕組みなども一部記され、地元だけに興味深い話題といえる。
 そうした、事例紹介を交えつつ著者が考えるまちを変える鉄則(覚悟)として10の
キーワードが並べられている。その基本的な考え方にあるものは、地域が行政(補助金)に頼らず、自らの意志で活動ではなく事業を展開し儲け、さらにその儲けを地域に還元させて取組み活性化を目指すというもの。地域が儲けるために何が必要で重要か。地域の事情が様々な中で当てはまるキーワードも異なると思うが、地域が儲けて活性化をはかるためのアイデア出しのきっかけと、実行への後押しになるのではないだろうか。

 (2016.2.3/村井亮治)