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破綻と再生−自治体財政をどうするか/五十嵐敬喜+立法学ゼミ著

日本評論社/1999.12.25

 自治体財政が危機的状況を迎えているにもかかわらず、あいかわらず景気対策としての公共事業が次々に実施されていく。このツケは一体だれが負担することになるのか。恐ろしい事態なのに危機感を持っている人は少ない。

 本書では財政再建団体になった2つの自治体の例をだしながら、再生の原則の1は「危機の共有」だと指摘している。工場団地誘致に失敗して多額の債務を出した赤池町。住民のニーズに応えて過剰サービスをした結果多額の債務を生んだ香春町。ケースは違っても再建するためには、議員や住民からの無理をしりぞけるためのお墨付きとして「財政再建団体」の選択が必要だったという。
 そして再建を通じてあらゆる立場の人の意識が変わったという。再建明けに何をするかが争点になった選挙では、公共料金の値下げを公約し、図書館建設を約束した新人ではなく、公共料金もあげたまま据え置き、ハコモノを約束しなかった現職を市民が選んだ。町長自身が一番変わったという赤池町の話しは、これから財政再建に取り組む多くの都市にとって大きな教訓となろう。

 自治体財政を健全にするため、独自の工夫を積み上げてきたという真鶴町「街づくり条例、宗像市「民間委託」、藤沢市「都市経営」などの成功体験も興味深い。人件費を類似自治体の半分に押さえ、健全財政の典型となっている宗像市では、議員がよく勉強し、行政はスクラップ・アンド・ビルトをすすめ、市民が行政に対し厳しい目を向けている。
 これまで自治体財政については知らないことが多かった。警察予算の話しも最近の警察不祥事をみているとさもありなんという気がする。まちづくりの視点として財政にも目をむけていきたいものである。

(2000.3.3/石田富男)