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外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD/フレッド・ピアス 著、藤井留美 訳

草思社/2016年7月20日発行

 マスコミ等で「外来種」が話題になる度に、外来種というだけで悪者扱いされているような違和感があった。そんな中、手にとったのが本著である。
 固有種を根絶やしにしたり、生育環境を荒らしまくったり、病気を蔓延させる外来種は人間にとっては脅威になるかもしれない。一方で、人間によって新しい土地に導入されたものの、あっという間に消えた外来種も存在する。また、在来種の受粉や種まきに役立ったり、栄養源や生育環境を提供する優良外来種も存在する。例えば、環境保護主義者が「テロリスト」と呼ぶ外来種の中にさえ、人間が悪化させた湖の水質汚染を改善したり、線路脇など人間が攪乱した生態系では枯れてしまう在来種の代わりに空スペースを埋めることで自然を保ったりしていて、生態系に良い影響を与えているものも存在する。
 外来種を悪者扱いする根底には変化への恐怖感や、根拠の薄い時代遅れの自然観があるようだ。「外来種はなんであれ排除せよ、より古くから固有と認定される在来種こそ保全されるべき」という自然保護論は、現代生態学の領域ではすでに四方から批判され、過去の命題となっているそうだ。
 人間が地球の気候や生態系にまで影響をおよぼす「人新世(じんしんせい)」である現代では、人間が勝手に思い描く「手つかずの自然」や人間の存在しない原始の自然の復元を求めるのではなく、外来種の力を借りながら新しい自然を再構築していくべきという著者の考えに多いに共感した。ぜひ多くの人にお読みいただきたい。

(2018.6.18/山崎 崇)