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コンクリート魂 浅野祥雲大全/大竹敏行 著
青月社/2014.9.30発行

 愛知、岐阜の人なら浅野祥雲という名前は知らなくても、おそらく、彼の作ったコンクリート像を見たことのある人は多いはずである。祥雲の代表作は日進市五色園、犬山市桃太郎神社、関ヶ原ウォーランドの彫刻群で、ピンと来る人もいるだろう。これらの施設はB級スポットとして、雑誌やTVで何度も紹介されてきた施設であるが、その他にも、各地で巨大な仏像をたくさん作っていたことはあまり知られていない。祥雲は名古屋市熱田区に居を構え、分かっているだけで仏像を中心に750体以上のコンクリート像を弟子も取らずにほとんど1人で作り上げた明治生まれの造形家である。今までしっかりした研究がされていないので、仏師なのか、芸術家なのか、職人なのか、はっきりしていない。
 本書は東海地方で馴染み深い彫刻をたくさん作ったにも関わらず、今までまともに取り上げられなかった浅野祥雲の、初の作品集であると同時に、唯一の研究本である。
 また、本書の写真は高校の友人が撮影しており話を聞いた。友人は数年前から祥雲の像に興味をもち、各地で撮影した写真をブログにアップしていたところ著者の目にとまり、本書への掲載依頼が来たそうだ。「祥雲はB級スポット好きにはすでに注目されていたため、ネットにもたくさんの写真がアップされていたが、いかにもB級ですというような、ちゃかした写真が多い。自分はしっかり写真として見れることを心がけて撮っていたので使用されたのだろう。」と語っている。実際、ネットで調べるとB級スポット界ではすでに有名人のようだし、私自身、五色園の彫刻群を見て、「昔、無理やり観光名所をつくろうとして、ちょっと器用な左官屋さんか何かに頼み、B級な彫刻ができてしまった。」程度にしか思っていなかった。しかし、本書を読むと、それが単なるB級彫刻ではないことに気付き、一気に価値観が逆転するので面白い。
 また、本書は12月28日の中日新聞「私の3冊」のコーナーで東大の教授にも紹介されている。その方は現存する像の多さに驚嘆していた。
 祥雲の像は完成後数十年経っており、朽ちかけている物も多い。この本をきっかけに改めて価値が見直され、修復や保存に繋がる活動も生まれてくるだろう。

(2015.1.5/堀内研自)