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霧にむせぶ桂林 急成長のパワー

はじめに
昨年度2月に(2014.2.22−25)、桂林市に行く機会に恵まれました。海道清信先生(名城大学都市情報学部教授)の呼びかけで、桂林理工大学との研究交流を中心に、桂林市の都市開発や臨桂新区(ニュータウン)の視察を兼ねて訪問しました。大阪産業大学の吉川耕治教授+留学生の4人のメンバーです。名城大学と桂林理工大学とは研究協定等が結ばれ、かつ留学生(修士)に桂林市出身者がありこともあって実現した視察です。というのも、漠として訪問してもほとんど情報を得ることができませんが、大学や留学生のネットワークがあって、なんとか情報を得ることができるというものです。

桂林市の概況
桂林市(565km2/日本との比較では市でなく県レベル)は人口80万人、大桂林都市圏(27,000km2)では530万人です。桂林と言えば岩山の間を流れる漓江を一艘の舟がゆったりと滑って行く水墨画のイメージが定着していますが、それは郊外であり(今回は季節柄、行けなかった)、桂林の市街地は大都市で、自動車、オートバイ、人々で賑わっています。そして市街地の至る所に岩山が高く聳えている、不思議な風景が広がる都市です。世界的な観光都市の一つであり、気候が穏やかなためか、ここに老後は住もうという人も多いそうです。われわれが訪問した時期は梅雨のように毎日が雨で、岩山が霞んでみえて、次回は天候のいい時に来ないとそのことは実感できません。

都市のインフラや町並み
都市インフラの水準は高く(社会主義国は強権があるのでインフラの整備水準は高い)、例えば主要幹線では中央分離帯があり、片側車道3車線、自転車・電動バイクレーン、歩道であり、車道と自転車・電動バイクレーンの間に街路樹が連なっています。ゆったりとした道路空間(50m幅員か?)を確保しています。電動バイクの普及率は高く、2000元程度(日本円で4.5万円程度)で買えますが、どうも馬力小さいようで、坂道は喘ぎながら走るし、客乗せバイクタクシーはすべてガソリンバイクでした。
道路沿いの建物の1階は原則店舗(物販・飲食・サービス)であり、今のところ空き店舗はほとんどない状態です。これは規制により1階原則店舗となっているのかどうか、まだ情報不足です。が、そうなら、過剰店舗になるので家賃は安くならざるを得なくなって、チャレンジショップ的な店舗も生まれてくるような気がします。街のにぎわいにとっては不可欠な要素と言えます。

ニュータウン臨桂新区
桂林の中心部から自動車で1時間のところに臨桂新区と称するニュータウンがあります。面積1,500ha、人口30万人の大規模ニュータウンを10年程度で完成させようという計画です。地方都市でもそれほど急成長していることが見て取れます。高蔵寺ニュータウン(702ha)や泉北ニュータウン(1,557ha)は20年以上の歳月がかかって事業が収束していることと比較すれば、スピードの違いが明白です。スピードが速いほど、若い同階層の居住者が大量に入居するため、日本でも問題になっている課題、一気に高齢化が進行することに伴う問題(コミュニティの活力や空間としてのバリアフリー)を内包しているといえましょう。そしてニュータウン計画が、公園を除き、すべて都市的土地利用で埋めているため、変化に対応する余地がなくなっています。計画のしすぎが課題となっています。この点については大学の研究者達も問題意識を持っており、規模、スピード、計画内容をどのレベルで対応することが、桂林市の抱える課題に応えていけるのか、悩んでいるところです。
社会主義国だから、あらゆる面で遅れているとは誤解です。むしろ公権力が強く、既得権が少ない分野は日本より進んでいる場合があります。情報通信ネットワークや太陽光発電等スマートシティ対策がそれです。街なかの喫茶店でも、多くが独自のwifiをもって、無料で提供しています。ただし、桂林中心市街地と臨桂新区を結ぶ交通インフラが弱く、自動車に頼らず鉄道系の対応が求められています。

桂林理工大学での講義
桂林理工大学で200人ほどの学生を相手に講義をしてきました。私のテーマは産業観光でしたが(ちなみに海道先生はコンパクトシティ、吉川先生は都市交通-LRT)、ハイレベルの通訳の先生がおられたこともあって、誰ひとり寝ることもなく、目を輝かせて聴講していました。昨日より今日、今日より明日、暮らしが良くなるという高度経済成長の只中にあるのか、学生の意気込みを感じることができました。日本もそういう時代があったわけです。中国は日本の11倍の人口を有しているので、すごいエネルギーを秘めています。日本の今の若者にいかに夢(打ち間違いで「嫁」と打ってしまった。少子化対策上あながち間違いではないか)を持ってもらうかは我々世代の課題でしょう。

おわりに
日本の経験は高度経済成長の中国に活かせるのか、あるいは中国での最先端の取組みは日本の参考になるのか、まだ研究の緒に就いたところです。草の根でつながって、研究をはじめとした交流を深化させていきたいものです。なお、大学での講義ではちゃんと笑いを取ってきました。笑いのツボは万国共通なのではないかと確信しております。

一般イメージ
桂林の一般的イメージはこんな感じ(桂林区某画廊にて)
都心の道路
都心の道路 自転車・電動バイク等の区画された道路
都心住宅地
都心の住宅地 霞んで岩山が見える
高層団地模型
ニュータウンの高層団地の模型
高層団地実物
ニュータウンの高層団地の実物
(2014.4.14/井澤知旦)