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平等院ミュージアム 鳳翔館 
  この美術館は平等院の境内にあり、老朽化した旧宝物館に代わり、最新の収蔵、展示環境を整備した美術館として建設されたものである。平等院と言えば鳳凰堂であるが、この美術館は鳳凰堂のすぐ背後にある丘の上に建てられているため、建物の外観は非常にデリケートな配慮が必要となった。さらに敷地は風致地区に指定されていたため和風の建築が求められる上、法規上木造は造れない。三角の屋根にしてほしいという要望も出されたが、設計者の栗生明氏は鳳凰堂の前の池から屋根が見えてしまうという理由で、思い切ってフラットルーフでデザインした。この決断は功を奏し、鳳凰堂正面からは美術館がほとんど意識されない景観を作り出すと共に、建築のデザインにおいても、フラットルーフで鉄やコンクリートを使用した現代建築でありながら優れた和風を創出している。建物は展示室を地下に埋め、地上は伸びやかな平屋とし、鳳凰堂に合わせた3層の軽快なフラットルーフをかけている。コンクリートは型枠にスギ板をずらして使用することで木目の凹凸が強調され、自然素材の風合いを生み出している。外観の特徴となっている鉄骨のリブ梁は、日本建築の垂木のようなリズムを生み、周辺の歴史的な建築と良く調和している。軒裏や天井に張られた金属パネルも、周辺の緑が平滑な仕上げに映り込むことにより、にじみやかすれのような風情をあらわし、金属的な冷たさを感じさせないのである。歴史的な景観の中に建つ現代建築として、随所にすばらしい工夫が盛り込まれた建築である。

外観

軒裏に映る苔庭
  (2007.5.14/堀内研自)