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北海道三都物語
小樽・旭川・札幌/2006.6
 6月上旬、自主参加ながら全員が社員旅行に出かけた。目的地は小樽、旭川、札幌の北海道シリーズである。本州以南は梅雨入りのため、この時期に旅行しやすい場所と言えば北海道なのだが、3日のうち晴れの日は1日のみであった。場所選定はまちづくりコンサルタントであるがゆえに、どうしても新しい取り組みを実施している街ということになる。私自身は温泉があれば文句は言わない。

【小樽運河は今】

  さて、小樽と言えば小樽運河。ニシン漁で栄えた漁港を持ち、札幌建設の資材搬入港として役割を担うことから28年の議論を経て、運河整備がなされた。大正12年のことである。貨物輸送の近代化と港湾の整備、札幌の急成長により、小樽は斜陽化していくことになる。昭和41年に小樽臨港線道路の新設を機に運河の埋めたて計画が出たが、これもまた16年にわたり、埋めたてによる道路整備か保存かの運河論争に発展し、昭和61年に南側半分が埋めたてられ、道路と散策路が整備された。まちづくりの大方向転換への合意形成には20〜30年かかっている。
 「石造り倉庫群も店舗や博物館に再利用され、運河は歴史と浪漫の街小樽の象徴として蘇りました。」と指摘されているように、運河沿いの倉庫群は観光施設として利用されている。直近では10数年前に小樽を訪れたが、その時に比べ、商業施設が圧倒的に増えている。とくに北一硝子の増殖には目を見張るものがある。硝子の販売から、飲食、美術館・工房の見学や体験、そして酒類ショップまで揃えている。
 しかし、である。小樽の産業は商工港湾と観光であり、札幌のベットタウンとしての性格を有している。1964年の人口20.7万人をピークに人口は減少を続け、2006年5月で14.2万人まで落ち込んでいる。ちなみに港湾としての取扱貨物量は1,400万トン(名古屋港は1億8,200万トン)である。観光に力点を置いているものの、893万人(01)から754万人(04)に減少している。とくに冬の小樽の観光客は夏の半分程度に落ちる。観光分野は多くの都市が交流による活性化を目指しているので、道内での競争はもとより、国内外との競争になかで生き残っていかねばならない。明るいビジョンのもとで相当な持続的頑張りが求められる。先に見たように小樽市民は辛抱強くまちづくりを進めてきた歴史があり、大いに期待したい。

【二番煎じのほうが一番煎じよりうまい?】

  旭川と言えば、昔は平和買物公園(歩行者天国)、今は旭山動物園である。平和買物公園の実現の背景には、当時、札幌への一極集中に対する道内第二の都市の地盤沈下に対する住民の不安があった。そこで市と地元商店街若手経営者等が幹線道路の平和通り(1km)を「買物公園」にする構想を打ち上げるも、市民や関係者、関係行政機関の反応は冷たかった。そこで地道な機運醸成のための広報活動や積極的な関係機関への説得を通じ、交通社会実験にこぎ着けた。1969年の実験期間中は平常の人出の5〜6倍と市民の支持を得、また懐疑的な商店主の賛同を得ることで、本格的な取り組みが1972年から始まり、30年以上の歴史を持ち、今日まで継続している。いわゆる歩行者天国の嚆矢である。
 もう一つの旭山動物園は1967年にオープンした普通の動物園であった。旭川の人口増加とともに入園者も増加したが、1983年の60万人をピークに減少し、1996年には26万人に落ち込んだ。それを打開すべく「行動展示」あるいは「環境エンリッチメント(飼育動物の幸福な暮らし)」に取り組むことになる。もうじゅう館、ペンギン館、オランウータンの空中運動場、ほっきょくぐま館、あざらし館を次々と整備し、2004年7月には上野動物園を抜き、2005年度入場者は200万人を突破した。これだけ入場者が増えるとマスコミはほっとかない。プロジェクトXで取りあげられ、ドラマ「奇跡の動物園〜旭山動物園物語〜」が放送された。館長による「<旭山動物園>革命」も出版されることになる。東山動植物園の2005年度入場者数は165万人であり、旭山動物園に抜かれ、第3位となっている。もちろん東山動植物園も手を拱いてわけでなく、名古屋市もその再生を施策の柱に据えている。名古屋市の財力と背後人口からすれば、同じ手法で再生すれば、旭山動物園の入場者を抜くことは可能であろう。300万人実績があるからである。しかし、である。旭山動物園の取り組みを、なぜ全国に先駆けてできなかったのか?

 札幌は丁度「YOSAKOIソーラン祭り」で沸いていた。15回目を迎えていた。参加チームは350チーム、大通公園をはじめとする31会場、5日間開催で186万人の人々を集めた。今年は雨天日が多かったため前年214万人から13%減になっている。これだけのチームが参加すると、衣装を着けた人々が昼夜を問わず至る所で出くわす。札幌都心が祭り一色になる。1チームにスピーカーと照明をつけたデコレーショントラック1台がセットとなるので、会場周りはトラック野郎の集会かと思わせるほど、待機トラックが多い。ちなみにこの祭りの発案者は春日井出身である。
名古屋では第8回「にっぽんど真ん中祭り」が8月下旬の3日間185チーム、20会場で開催される。昨年は175チームで197万人の観客動員数となり、参加チームの増加率に比例すると仮定すれば、「YOSAKOIソーラン祭り」を抜くことになる。主催者の頑張りに敬意を表する次第である。

 北海道人口563万人、東海三県人口1124万人を比較すると、圧倒的に名古屋のポテンシャルは高い。同じことをやればそれを追い越すパワーはある。課題は誰も考えつかないアイデアとそれを最初に取り組むパワーであろうか。二番煎じ、三番煎じでは家元にはなれない。失敗してでも新しいことに挑戦する者への敬意と支援が求められる。



 

曇天の小樽運河


JR小樽駅のランプ飾り

雨天の旭川平和買物公園


旭山動物園 あざらし館 
アザラシが通るたびに歓声が上がる



大通公園での演舞

(2006.6.26/井澤 知旦)