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日本橋 〜効率性最優先からの転換〜


(東京都中央区)

 初めて「日本橋」を目にした時は、「これが!?」とショックを受けたものだ。上空を高速道路で覆われたその姿からは、歴史を尊重しようという気持ちが全く感じられず、あまりにも割り切ったその姿勢に感心した位である。しかし、最近は少しずつ状況が変わってきているようだ。日本橋界隈に広がる日本橋地域では、歴史を生かしつつ、まちを活性化させようという取組みがはじまっている。国、地方公共団体、地元コミュニティ、民間企業、大学などがコラボレーションしながら、様々な団体をつくって活動をしているそうだ。

 日本橋地域には、大正、昭和初期を代表する歴史的建造物が集積しているが、それらを活かすために色々な努力がされている。いくつかの建造物は、夜間ライトアップされており、中でも2004年10月から始まった日本銀行旧館のライトアップは特に美しい。これは地元の5年来の働きかけの成果だそうだ。また、2005年7月竣工予定の日本橋三井タワーの建設工事が現在進行中であるが、「重要文化財特別型特定街区制度」の適用を受け、重要文化財である三井本館の保存と隣接地における開発を両立させようとしている。日本橋地域の中では圧倒的な高層タワーとなる予定であるが三井本館との調和を重視し、通り沿いの軒線を揃えたり、列柱の意匠を取り入れたりしている。タワーの竣工と同時に、三井本館の内部には三井家所有の美術品を展示する「三井記念美術館」がオープンする予定である。

 シンボルである日本橋についても、橋を活かすための色々な動きがある。「名橋『日本橋』保存会」は、「高速道路を移設することにより日本橋をよみがえらせる」ことを目的として設立された会であるが、毎年この会を中心に日本橋の橋洗いを行っている。2004年は1200名もの参加があったそうだ。また、2003年には、国土交通省が日本橋創架400年記念事業として、日本橋の車道の中心に埋設されている道路元標のレプリカをデザインした石碑を橋際の広場に設置した。

 景観を阻害している上空の首都高速道路についても、移設を目指した議論が行われている。2003年8月からは、学識者、地元、国、都、区、首都高速公団により「日本橋みちと景観を考える懇談会」が開催され、この会の主催で「日本橋まちづくりアイデアコンペ」を行っている。日本橋の景観づくりも、ようやく真剣に検討されはじめたようだ。

 効率性のみを追求した時代がようやく終わり、文化や環境の持つ力が見直されはじめてきている。日本橋の上空に青空が戻る日が早く来ればいいと思う。

日本橋と首都高速道路


建設中の日本橋三井タワー(奥)と
三井本館(手前)


日本銀行旧館のライトアップ

(2004.11.26/伊藤彩子)