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欧州での風景〜歴史的建造物の保存と活用


社)都市計画コンサルタント協会 欧州都市計画事情調査団(2000.9.23〜10.3)

 前号のメールマガジンの『スペーシアのこの頃』で触れた欧州の都市計画事情調査で気になった欧州での風景について報告します。今回は、フランスとイギリスの2カ国を訪問。例の事件の影響がどうでるか心配はしたがあまり大きな問題はなかった。

 初めてみるパリの街並みはとても美しかった。石造りによる重厚感のある建物、壁面には巧みな彫刻、窓には花が飾られ、一日中歩いていても飽きがこない。

 そんなパリも、長い歴史の中ではスクラップアンドビルドによる街づくりがもてはやされていた時代もあったという。しかし、旧い建物への歴史的価値を見出す動きが高まり、その保存と利用が進められている。その代表とも言えるのが、オルセー美術館だろう。鉄道駅舎を美術館に改装し、著名な芸術家の作品を数多く展示し人気の観光スポットとなった。欧州の駅舎のもつあの大空間を活かしつつ落ち着いた雰囲気を醸し出している。美術品よりも美術館そのものに興味がいくほど。

 また最近では規模が異なるが、地下鉄の地上にある駅舎や陸橋もその一つ。駅舎は、その外観は残しつつ、エスカレーター等の設備を追加し利便性の向上をはかっている。

  

 一方、イギリスのカーディフでは、築100年以上経過しているレンガ積みの建物に今でも人が暮らし、落ち着いた街並みが形成されていた。その建物は日本ではあまり見かけられない2戸1住宅で、左右対称のファサードで中央の壁を共有し、屋根には小さな煙突もある。そんな住宅が通りにいくつも並んでいる。また、煉瓦造りの倉庫を活用するため、隣接してレストランを増設し、ガラスによるデッキで連結し建物としての一体性を違和感なく築き上げている。


 日本でも旧い建物の保存はあるが、その維持管理がいつも問題となる。ここカーディフでも同様で、住宅の持ち主が個々で好きな様に外壁の色などを変えてはその景観が損なわれるという事から、数戸がまとまって修復を希望した場合はそのその費用の多くを行政が負担し、個人負担を軽くしている。

 今回の視察では、遠く1万キロ離れた所で行われている旧きものを残すための取り組みについてそのその詳しい話は聞けず残念だったが、魅力的な建物と街並み形成の一部を見る事ができたことは収穫であった。

  (2000.10.4/村井 亮治)