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大川端リバーシティ・晴海再開発地区・幕張ベイタウン


(社)日本住宅協会主催:住宅・宅地事情視察会(1998.7.17

【はじめに】

 丸一日かけて、首都圏の3ヶ所の住宅地を視察するツアーである。あいにく天気が悪く、車の乗り降りするのも大変であった。参加者が比較的多かったが、グループ別の行動であったので、十分に見学したり担当者の話を聞くことができた。

【大川端リバーシティ】 説明:住都公団 伊藤氏

●概 要

場 所 :東京都中央区佃

地区面積:28.7 ha(うち住宅用地11.4 ha)

工事着工:1986(S61)年4月

事業完了:2000(H12)年5月(住宅地の完了)

住宅戸数:3,886戸(分譲1,382戸、賃貸2,504戸)

事業主体:東京都住宅局、東京都住宅供給公社、住宅・都市整備公団、三井不動産

     (東京都及び公社は、既に完成)

 石川島播磨工業の跡地を取得し、土地の高度利用、複合利用を図ることをめざした都心定住型住宅を建設。総合設計制度を利用した高層マンション群である。東、西、北の3ブロックに分かれており、既に東ブロック(スポーツ施設以外)、西ブロックが完成している。当初、北ブロックは、全て商業・業務施設の予定であったが、バブルの影響でやむなく変更することになり、東京都の定住政策により、住宅に変更となった。

 現在は、北ブロックにおいて、三井不動産の分譲マンション( 54階)と住都公団の賃貸マンション(43階)が建設中である。これらが完成すれば、住宅棟は全て完成であるが、業務施設の目途が立っていないため、用途変更もあり得るらしい。また文化施設として、東京都文化記念館の計画があったが白紙となり、こちらも目途が立っていない。

 東京駅から約2 kmと好立地であり、ここに住むことがひとつのステイタスとされている(らしい)ことから、芸能人も多く住んでいるという。ちなみに家賃は3LDK約75uで約\250,000。北側住戸は日当たりは良くないが、眺望が良いことから人気があるとのこと。

 

【晴海再開発地区(トリトンスクエア)】 説明:住都公団 根本氏

●概 要

場 所 :東京都中央区晴海

地区面積:8.48 ha

工事着工:1993(H5)年度

事業完了:2001(H13)年度

住宅戸数:1,771戸

事業主体:住宅・都市整備公団、晴海一丁目地区市街地再開発組合

 当地区は、中央区のマスタープランと関連する再開発地区計画及び市街地再開発事業により、公団住宅の建て替え等の住宅、商業・業務施設、公共公益施設等により形成されている。現在は、住宅棟3棟が建っているだけであるが、地区のメインとなるオフィス棟とホールが着工しており、これが完成するとある程度外観が整う。

 容積率が、従前の 90%から700%となったことが、賃貸、分譲とも建て替えがうまくいった最大の理由であるとのこと。 

【東京湾アクアライン】

●概 要

区 間 :神奈川県川崎市〜千葉県木更津市

総延長 :15.1km

事業期間:1988年(S63)〜1997(H9)年12月

料 金 :普通車 片道\4,000(6年目からは\4,900)

総事業費:1兆4,400億円

 東京湾の中央部を横断する東京湾アクアラインは、川崎側が海底トンネル(約 10km)、木更津側が海上橋(約5km)からなっており、構想から31年の歳月をかけてついに完成した。

 今回の視察の目的とは直接関係ないが、首都圏の新しい目玉ということと交通渋滞を避けるということから通過することとなった。海底トンネルと海上橋の境のところに、PA(通称、海ほたる)があり、そこからは天気が良ければ、横浜方面、千葉方面はともかく、富士山まで見えるという。今回はあいにくの天気で残念ながら陸上部分は何も見えなかった。

 アクアライン自身は、通行する車はまばらで、閑古鳥が泣いていたが、海ほたるでは、観光バスで訪れた中年の人たちでごった返していた。海ほたるで Uターンができることから、ここに来ることが目的の人も多いことだろう。

 

【幕張ベイタウン】 説明:千葉県企業庁 ○○氏

●概 要

場 所 :千葉県千葉市美浜区

地区面積:約84 ha(うち住宅用地39 ha)

工事着工:1986(S61)年4月

事業完了:未 定

住宅戸数:約8,000戸(分譲約3,500戸、賃貸3,700戸、土地転貸借権付分譲約1,700戸)

事業主体:千葉県企業庁

住宅事業者:公的事業者―住都公団、千葉県住宅供給公社 民間事業者―三菱地所、伊藤忠、

      三井不動産、丸紅、野村不動産、清水建設の各グループ企業   

 幕張ベイタウンは、千葉県企業庁と各住宅事業者がパートナーシップを確立して、それぞれの立場から創意工夫を凝らし、新しい街の建設、整備に向けて事業を推進している。「住む」ことのみならず、人が「暮らす」ことに重点を置いており、街路に沿って住棟を配置することにより街の「賑わい」を感じ、住棟の中央に中庭(パティオ)を配置して「やすらぎ」を感じるよう配慮されている。

 概観からもわかるように、その街並みは個性的である。沿道型住宅の基本コンセプトを活かしながら、それぞれの住棟がデザインを競い合っているようである。現在は、中層街区が中心であるが、将来的には中層街区を囲むように超高層街区及び高層街区が建設される。

 現在は約 8,000人が居住している。世帯主の平均年齢は41歳。幕張新都心に勤める方をある程度対象にして計画されたが、実際は東京都心に通勤している人がほとんどだそうだ。従前の居住地は、千葉県内の人が多く、横浜方面からはほとんど皆無らしい。また、地区内にある打瀬小学校は、自由な教育方針やオープンな校舎のデザイン等が人気を集め、この小学校に通わせるために当地区に移り住む人もいるという。外国人も比較的多い。家賃は3LDK70u強で約\130,000(現在受付中の千葉県公社の物件、共益費含まず)。

 ここの特徴のひとつに土地転貸借権付分譲方式を採用していることがあげられる。これは事業主である千葉県企業庁が、高・中層住宅において土地を売ってしまうのではなく、土地を民間各事業者に貸し、それを居住者が土地を賃借、建物を分譲取得する形態を取っている(定期借地権ではないため、借地期限後に更地にすることはない)。この手法を取り入れることにより、千葉県が継続的に民間業者や住民との接点が築かれ、当地区のまちづくりを将来的にも関わっていくことができるという。

 3年ほど前に訪れた時と比べて、ずいぶんまちが広がったと感じたが、その割に人影もまばらで活気がないのが気になった。

【雑 感】

 日本住宅協会の視察に参加するのは初めてであるが、全国各地の人が参加しているのにまず驚いた。今回視察した住宅のうち、大川端と晴海は超高層住宅が中心であることから、地方都市ではなかなか参考にできないと思うが、幕張ベイタウンは中層が中心(今現在は)であり、街並みは個性的であることからか、参加者は最も興味があるようであった。

 開発の経緯や手法、立地条件は、それぞれ異なるものの、どれも名古屋圏にはない住宅地開発であり、新鮮であった。晴海再開発以外は、以前訪れたことがあったが、担当者の話を聞きながらの視察は、有意義なものであった。

 住む立場から考えると、家賃は高いものの、地区外は下町情緒があふれ、なんと言っても都心に近い「大川端リバーシティ」にぜひ住みたいと感じた。

    (1998.8.3/加藤)